大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(う)904号 判決

被告人 田畑光久 外二名

〔抄 録〕

所論は、被告人金、同姉崎は昭和四六年八月一八日付起訴状により、被告人田畑と共謀して保谷正一から賭金名下に金員を騙取しようと企て、同年七月一日ころ、同人を欺罔し同人から賭金名下に現金五〇万円を騙取した事実につき起訴され、次いで同年八月三一日付起訴状により、被告人田畑と共謀のうえ前同様の企図のもとに同年七月二日ころ、保谷正一を欺罔し同人から賭金名下に現金二五万円を騙取した事実及び藤田某と共謀のうえ前同様の企図のもとに同年七月中旬ころ、保谷正一を欺罔し同人から賭金名下に現金一〇〇万円を騙取した事実につき起訴されたが、これらの犯行は単一犯意のもとに、短期間に、同一被害者に対し、同一の方法により行われたものであるから、全部を包括して一罪を構成するに過ぎない。従って昭和四六年八月三一日付起訴状による公訴は、刑訴法三三八条三号の公訴の提起があった事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたときに該当し、その公訴を棄却すべきであるのに、原判決がそのことなく、有罪判決をしたことは訴訟手続の法令に違反し、包括一罪の関係にある犯罪を三個の独立別罪と認定し併合罪として処断したことは判決に影響を及ぼす事実の誤認であると主張する。

金、姉崎両被告人が二回の起訴により三個の詐欺事実について公訴を提起され、原判決がこれを三個の独立した詐欺罪として有罪の判決をしていることは記録上明らかであり、三個の犯行が同一の保谷正一に対し、約半月の間に、同様の「さんかつば」と称する賭博方法を利用して行われたことは所論のとおり認められるが、第二回、三回の犯行は、保谷が前回の賭博において当然勝つべきところを花札の枚数を誤算したために負けたと思込み、自己の誤算がなければ必然に勝って前回の損害を回復し得ると誤信し、利慾を昂揚させている心理を、その都度順次利用したことが関係証拠より認められ、当初から事態の経過を見透して計画したものではなく、第三回の時は共犯者も従前と異り、全体を通じ第一の犯意に出た犯行とは認め難い。更に保谷の信じたように勝負が予想どおり進行すれば、花札の枚数を誤算しない限り、必勝の関係にあったことは事実であって、そこに同人に対する欺罔はなく、被告人等により保谷の不知の間に花札を抜き取る工作が行われたことによって、必勝の要件たる花札の枚数を欠く状態が作られたに拘らず、同人がなお必勝の状態にあるものと誤信していた点に、被告人等による金員騙取に連る欺罔が存するのであるから、各回の勝負毎に新たな欺罔行為が施されたものであって、全体を通じ包括して一罪と観念すべき関係にあるとは認められない。従って原判決に所論のような訴訟手続の法令違反も事実の誤認もなく、所論は採用し難い。

(高橋 寺内 千葉)

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