大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(う)990号 判決

被告人 須田亘男

〔抄 録〕

一、道路交通法第四二条の解釈の誤りの主張について。

本件交差点は、原判示の如く市街地の交通整理の行なわれていない左右の見とおしのきかない場所(司法警察員作成の実況見分調書によると本件交差点の角には隅切りがないことが認められる。)である。また被告人運転の車両の進行する道路と本件交差点でこれと交差する被害者運転の車両の進行する道路との幅員は原判示の如く前者が約六・六メートル、後者が約五・三メートルであるから、両道路とも幅員があまり広くなく、しかもほぼ等しいということができる。このような道路の状況においては、被害者運転の車両の進行する道路に一時停止の標識があっても、被告人の徐行義務は免除されないものと解すべきである。(最高裁判所昭和四二年(あ)第二一一号、同四三年七月一六日第三小法廷判決、最高裁判所刑事判例集第二二巻第七号八一三頁参照)

所論は、道路交通法(以下道交法という)第四二条は左右の見とおしがきかない交差点であっても当該交差点が交通整理の行なわれている場合およびその一方の道路が優先道路である場合においては、交通整理に基づいて右交差点を通過する車両または優先道路を通行する車両の運転者の徐行義務を免除しているが、右徐行義務の免除の実質的理由は信頼の原則の適用にあるから、右交通整理が行なわれている場合と同視すべき道交法第四三条による一時停止の標識がある場合は、同交差点が見とおしのきかない交差点であっても、一時停止の標識がない道路から同交差点に進入する車両の運転者の徐行義務は免除されるべきである。したがって本件において被告人には徐行義務はないというのである。しかしながら、所論の徐行義務免除の実質的理由が信頼の原則の適用にあるからといって、交通整理が行なわれている場合あるいは優先道路の場合と一時停止の標識がある場合を同じに律すべきであるとは解されないから、所論は、前提を欠き採用することができない。

また所論は、仮に前記最高裁判所の見解に従うとしても、右判決の趣旨からすると、一時停止の標識のある道路の幅員がそれと交差する他の道路の幅員より狭く且つ右の他の道路の幅員がかなり広い場合には、その道路から当該交差点に進入する車両は徐行義務を免除されることとなるから、一時停止の標識のない道路の幅員が具体的にどの程度であり、交差する道路の幅員の広狭の差が具体的にどの程度であれば徐行義務が免除されるかは、信頼の原則の適用の面から考え、一時停止標識のある道路に対し右標識のない道路が幹線道路といえるか否かによって決定すべきである。すなわち、右標識のない道路が幹線道路といえるなら徐行義務が免除されるというべきである。そして被告人進行の道路は幅員が被害者進行の道路の幅員より広く、交通量が被害者進行道路のそれより比較にならないくらい多いことなどに徴すると、被告人進行の道路が幹線道路ということができる。したがって、被告人に徐行義務はないというのである。しかしながら、前記最高裁判所判決は、所論の如き趣旨を判示しているものとは解されず、被告人に徐行義務なしとすることのできないことは、冒頭説示のとおりである。

原判決には道交法第四二条の解釈の誤りはなく、この点についての論旨は、理由がない。

(三井 石崎 杉山)

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