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東京高等裁判所 昭和47年(け)21号 決定

主文

本件異議の申立を棄却する。

理由

本件異議申立の理由は、弁護人増田弘名義の異議申立書記載のとおりであるから、これを引用する。

所論にかんがみ、一件記録を調査して考察すると、原決定の示した事実関係およびこれに基づいてした判断は、いずれも正当であるから、本件異議申立は、理由がない。よつて、刑事訴訟法三八六条二項、三八五条二項、四二六条一項に従い主文のとおり決定する。

(昭和四七年七月七日 東京高等裁判所第一刑事部)

弁護人増田弘の控訴棄却決定に対する異議の申立書(昭和四七年七月一日受付)

異議申立の趣旨

前示被告人に対する刑事傷害控訴被告事件について東京高等裁判所が昭和四七年六月二六日為した控訴棄却の決定は之を取消し更に相当なる裁判を求める。

異議申立の理由

一、東京高等裁判所は本件被告人の控訴申立に対して控訴趣意書を差出すべき期間の最終日を昭和四七年六月一九日と定めて通知し、その通知書は同年五月一〇日同被告人に送達された。

二、本件第一審弁護人増田弘は、その後幾許もなくして、同被告人から弁護の依頼を受け裁判所に提出すべき弁護人選任届を作成保持していた。

すなわち、控訴趣意書差出の際これと共に提出する所存であつた。

二、昭和四七年六月二〇日右弁護人は、所定の様式による控訴趣意書を東京高等裁判所第一三刑事部書記官室に直接持参して差出した。

三、控訴趣意書差出の最終日として指定された六月一九日の翌日右は差出されたわけではあるが、この一日の遅れは必ずしも最終日を徒過したというには当らず、仮りに徒過したとしても必ずしも事情やむを得ないもの絶無とは言い難い。

すなわち、恰もこの頃従来経験しなかつたような熾烈さで国鉄の所謂る遵法闘争が行われていたことは公知の事実で東京都内の国鉄は曽てない程度の混雑を呈し、被告人等地方から東京に通ずる常磐線のダイヤは、又著しく不規則にて上京困難の事情に在つたこれ等国鉄の混乱は自然郵便事情にも影響し、弁護人は自身控訴趣意書を持参して提出することを決意して最終日の翌日斯くは直接繋属部書記官室に差出した次第である。

されば、本件控訴趣意書の差出を受けた裁判所は、その差出された日が控訴趣意書を差出すべき最終期日の翌日に当ることは一見明瞭であつた筈である。

従つて、若し裁判所が刑事訴訟法第三八六条第一項に基いて裁判しようとならば控訴棄却の決定を以つてしなければならないのに、その挙に出てなかつたのは裁判所は当時の社会情勢からして一日の遅れは止むを得ない事情によると判断したるによる。

四、本件控訴趣意書差出後弁護人は同月二六日に至り弁護人選任届を担当部書記官室に自ら持参して提出した。

右は控訴趣意書提出の際共に提出すべきを弁護人は失念したので同部書記官に対して早速に、帰宅後郵便でこれを提出追完すべき旨申添えたが当時の郵便事情からして到達に危惧を抱いたので次ぎの上京の際即ち同月二六日斯くは持参提出した次第である。

五、然るをこれに対して裁判所は「同月二六日に至つてやうやく弁護人選任届の提出があつたのである」とてこゝに於て急遽刑事訴訟法第三八六条第一項に基いて控訴棄却の決定をしたのである。

けれども、凡そ被告人は何時でも弁護人を選任し得るものであり控訴趣意書差出期限のように、従つて弁護届提出について期限の定めはない。

この事は唯単に弁護屈の提出の自由を保証しただけのことではなく弁護人選任届が刑事訴訟規則第一八条の形式を具備して提出された以上右は常に弁護届として最も妥当な場合に適時に提出されたものと解すべきであることは恐らくは謂う迄もないところであろう。

これを本件について言えば既に控訴趣意書が未だ弁護人選任届が提出されていないのに弁護人名義で差出されて未だこれについて何等の裁判の為されない以前に弁護人選任届が提出されたのであるから控訴趣意書差出の際の弁護人選任届欠缺の瑕疵はこれによつて治癒されたか又は弁護届は追完されたものとすべきである。

それなのに弁護届が同月二六日に至つてやうやく提出があつたのであるとし「しかもかように遅延したことがやむを得ない事情に基くものとは認められない」としているところから見ると裁判所は弁護人選任届の提出も控訴趣意書差出最終日とし弁護届の欠缺補正又は追完はこれを許さないものとするに似て結局するところ裁判所の判断は民事訴訟規則第二三八条の救済規定の適用を不当に拒むものとせざるを得ない。

右の通り申立てる。

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