東京高等裁判所 昭和47年(ネ)127号 判決
控訴人は、本件預託金は委任事務処理に必要な費用の前払金であるから、これをもって受任者の委任者に対する債権と相殺するが如きことは受任者の善管注意義務違反である、と主張する。しかし、不渡異議申立預託金は、不渡手形の支払義務者が、銀行取引停止処分を免れる目的で、支払銀行に不渡異議申立手続を依頼し、支払銀行の手形交換所に提供すべき異議申立提供金の見返資金とする趣旨で支払銀行に預託したものであるところ、右提供金が必要とされる所以は手形債務者に支払能力のあることを明らかにし、かつ、異議申立の濫用を防止するにあるのであるから、右預託金をもって控訴人の主張する如き費用の前払金とはなし得ず、従って、支払銀行において自己の反対債権をもって右預託金の返還債権と相殺をしたからといって、それが控訴人主張の善管注意義務に違反するものとも解し難い。
(石田哲 小林 関口)