東京高等裁判所 昭和47年(ネ)1558号 判決
してみると、前記のとおり本訴は前訴と訴訟物を同じくするものであるから、裁判所は、前訴についての上記確定判決の既判力により、これと異なる判断をなし得ない拘束を受ける結果、控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものであって、原判決のように本訴が前訴と二重起訴の関係にあるから許されないとして、控訴人の訴を却下することは、前記認定のとおり、前訴は既に確定していて、二重起訴の関係が解消していることを看過したものであって不当というべきである。
しかし、訴却下の判決は、請求棄却の判決に比して、上訴した敗訴の当事者にとって利益なものであるから、控訴人のみの控訴に係り、被控訴人からの控訴ないし附帯控訴のない本件においては(なお、叙上の理により訴却下の判決に対して、被告は請求棄却を求めて控訴ないし附帯控訴を申し立てる利益を有することが明らかである。)、上訴審における不利益変更が禁じられている結果、当裁判所としては、原判決を取り消して、控訴人の本訴請求を棄却することはできず、また、原判決を取り消して、本件を原審に差し戻しても、控訴人が請求棄却の判決を受ける運命にあることは明らかであるので、かような場合において、民訴法第三八八条を適用することなく、単に控訴を棄却する判決をするを以て足るものというべきである。
(白石 川上 間中)