東京高等裁判所 昭和47年(ネ)1847号 判決
一、当裁判所は、第二項および第三項のとおり附加訂正するほか、原判決記載の理由と同一の理由により、被控訴人物件が控訴人の本件実用新案権および意匠権を侵害するものではないと認めるので、これを引用する。ただし、「逆U字状部」(原判決二四枚目表四行目、五行目、二六枚目表一〇行目)とあるのを「彎曲状部」と、「連繋片」(原判決二四枚目表八行目、二六枚目表一〇行目、二九枚目表九行目、同裏九行目、三〇枚目表一行目)とあるのを「連繋部」と訂正し、原判決二四枚目表四行目「その終端に」の次に「本件考案の逆U字状部に相当する」を、同二六枚目表八行目「連繋片」の次に「または連繋部」を、「逆U字状部」の次に「または彎曲状部」を、同二九枚目裏四行目「両者の連繋片」の次に「および連繋部」を加え、原判決二四枚目表九、一〇行目に「フツク12の基端はハンガー主体の頂点部に形成された環状溝11に埋設されている」とあるのを「ハンガー主体の頂点部には環状溝11を有する基端を埋設して回動自在としたフツク12を挿着している」と訂正する。
二、原判決二七枚目表五行目「このことよりすれば」から同裏六行目「解せざるをえない。」までを次のとおり訂正する。
これらの記載によれば、横桟を連繋片の長さだけハンガー主体の下端より下方に設けること、すなわち、ハンガー主体の下端と横桟の上面との間に空隙が存するように、逆U字状部から連繋片を垂設することが、本件考案の構成要件をなしていることが認められる。これに対し、前記の別紙物件目録(一)記載の図面および説明書によれば、被控訴人物件の連繋部は、横桟10の延長上にある8´、9´と、これが彎曲状部6、7と結合する内側面に生ずる鋭角を埋める8″、9″が合体した三角形状のものであり、ハンガー主体の下端と横桟の上面が同じ高さにあり、両者の間に空隙がないことが認められる。したがつて、被控訴人物件は、本件考案の連繋片を逆U字状部に垂設するという構成を欠き、その結果、本件考案に比べ、ハンガー主体の大きさが同じであつても、横桟が短く、この上面とハンガー主体内側が構成する二等辺三角形の面積が狭くなり、ズボン等の掛け外しを容易にするという作用効果の点で本件考案に劣ることを容易に推認することができる。また、前認定のとおり、本件考案の横桟も被控訴人物件の横桟も、上面を弧状とした形状であるから、これに二つ折りにして掛けたズボン等に折目、しわなどが生ずるのを防止するという同じ作用効果を生ずることはうかがわれる。しかし、実用新案登録請求の範囲にわざわざその形状まで記載してある以上、前認定の横桟の形状もまた本件考案の構成要件をなしていると解さなければならない。したがつて、控訴人が当審で主張する(a)および(d)の点において両者の作用効果が共通であるとしても、被控訴人物件の横桟は、本件考案の横桟とは構成が異なるといわなければならない。
三、原判決三〇枚目表二、三行目の「さらにハンガーの」から同五行目の「印象を異にし、」までを次のとおり訂正する。
ハンガーという物品の性質、用途に照らせば、これを全体として観察する場合、以上の相違点が看者の注意を強く惹く点であると認めるのが相当である。
四、よつて、控訴人の本件控訴は理由がないから、これを棄却する。
〔編註その一〕本件における当事者の主張は左のとおりである。
一、申立
控訴人は「一、原判決を取消す。二、被控訴人は、別紙目録(一)第一図から第七図までおよびその説明書記載のハンガー、ならびに原判決添附目録(二)正面図、背面図、平面図、底面図および右側面図にそれぞれ表示する意匠を有するハンガーを、いずれも業として製造し、譲渡し、または譲渡のため展示してはならない。三、被控訴人は、その本店、営業所および工場に存する前項の物件を廃棄せよ。四、訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。
二、当事者双方の主張
控訴人が第三項のとおりその主張を附加したほかは、原判決事実摘示のとおりであるから、これを引用する。ただし、「別紙目録(一)、(二)記載の物件」(原判決六枚目表五行目)とあるのを「別紙目録(一)および原判決添附目録(二)記載の物件」と、「別紙目録(二)記載の写真」(原判決七枚目裏末行から八枚目表一行目)とあるのを「原判決添附目録(二)記載の写真」と、「逆U字状部」(原判決六枚目裏一、二、三、七行目、七枚目表七行目、一八枚目裏八、一〇行目)とあるのを「彎曲状部」と、「連繋片」(原判決六枚目裏七行目、七枚目表七行目)とあるのを「連繋部」と訂正し、原判決一〇枚目表四行目から同裏七行目までを削除する。
三、控訴人の主張の追加
(一) 被控訴人物件の「彎曲状部」は本件考案の「逆U字状部」に被控訴人物件の「連繋部」は本件考案の「連繋片」にそれぞれ相当し、いずれもその構成を等しくしている。
(二) 本件考案の横桟の構成および作用効果は次のとおりである。
(a) 横桟は、山形のハンガー主体および連繋片とともに一体成型され、その底辺として二等辺三角形状の枠体を構成し、これによつて合成樹脂製ハンガー主体の強度を著しく増大する。
(b) 横桟は、ズボン等を二つ折りして掛けるのに利用されるが、上面を弧状とし、前後面をくぼませたので、折目を派生させるおそれがない。
(c) 横桟は、連繋片間に架設したもので、主体の逆U字状部との間に空隙を有するため、ズボン等の掛け外しに支障がない。
(d) 横桟は、逆U字状部の下方間に位置し、ハンガー主体の頂部より前方にあるので、これに掛けたズボン等がハンガー主体に掛けた上衣等に悪影響を及ぼさない。
これに対し、被控訴人物件の横桟(別紙目録第五図の長さLにわたる部分10)の構成および作用効果は次のとおりである。
(a) 横桟は、山形のハンガー主体および連繋部とともに合成樹脂により一体成型され、その底辺として二等辺三角形状の枠体を構成し、これによつてハンガー主体の強度を増大する。
(b) 横桟は、ズボン等を二つ折りして掛けるのに利用されるが、上面を弧状とし、前面をカギ型にくぼませたので、折目、しわなどの派生を防止する。後面が平面であることは、横桟のこの機能を左右しない。
(c) 横桟は、連繋部間に架設したもので、この連繋部は主体の彎曲状部と横桟の結合する内側面に鋭角を埋めた空隙を作り、ズボン等の掛け外しに支障がない。
(d) 横桟は、彎曲状部の下方間に位置し、ハンガー主体の頂部より前方にあるので、これに掛けた上衣等に悪影響を及ぼさない。
したがつて、被控訴人物件の横桟の構成および作用効果は、本件考案の横桟のそれと同じである。