東京高等裁判所 昭和47年(ネ)919号 判決
控訴人らの当審における第一次の主張について、その主張するところは、刑法第九六条の三第二項の法意は同条の禁止に触れる談合をした者に対する競落を法律上当然無効とするにあるというに帰するが、仮に、被控訴人のした原判示の談合が同条の禁止に触れるものとするも、右主張は採用できない。蓋し、刑法第九六条の三の罪の罪質と競落が最高価競買人に競売不動産の所有権を取得させるため競落許可決定という裁判でなされる公法上の処分であることを合せ考えると、最高価競買人が同条の禁止する談合をしたとき、その反公序良俗性の故に、競落許可決定が民事訴訟法第六七二条第一号もしくは第二号所定の競落不許の理由があるものとして取消されることがあるとしても、取消を俟たないで競落許可決定が法律上当然無効であると解しなければならないほどの強い反公序良俗性があるものとは考えられないからである。(なお、本件の場合被控訴人に対する競落許可決定が取消された事実は認められない。)更に、刑法第九六条の三の規定は昭和一六年法律第六一号による新設規定であるところ、もし同条の立法趣旨が控訴人ら主張のとおりとすれば、民事訴訟法競売法中にその旨の規定が設けらるべきであるのに、かかる措置がとられず、単に同年法律第五七号により民事訴訟法第六八八条第四項以下が改正あるいは新設されたにとどまるものである。(右規定は競売法第三二条第二項により同法による競売に準用されている。)このことは刑法第九六条の三第二項の法意が控訴人ら主張のとおりでないことを裏書しているというべきであろう。
(久利 栗山 舘)