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東京高等裁判所 昭和47年(ラ)1040号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔決定理由〕抗告代理人は、原決定(東京地方裁判所が昭和四七年一二月二七日付でした「当庁昭和四七年(ワ)第九、七六六号建物収去土地明渡請求事件が終了するまで本件借地非訟事件手続を中止する」との決定)を取り消し、抗告費用を相手方らの負担とする旨の裁判を求めた。

その理由の要旨とするところは、

(一) 抗告人は、相手方らより東京都中央区日本橋本町四丁目一一番の四宅地93.22平方米を非堅固の建物所有の目的で賃借しているが、東京地方裁判所に対して、昭和四六年九月二九日右借地契約を堅固な建物所有を目的とするものに変更するとの裁判を求める旨の申立をなし(同庁昭和四六年借(チ)第三七号)、その手続が進行して、裁判がなされる直前にある。

(二) ところで、相手方らは昭和三三年抗告人を相手取り、抗告人が本件土地を不法占有しているとして、右土地に関して建物収去土地明渡の訴を提起し、最高裁判所で抗告人勝訴の判決があり、抗告人の賃借権の存在が確定した。しかるに、相手方らはなおも執念深く、右土地に関して建物収去土地明渡の調停を申立て、それが不調に終つたけれども、さらに同じく同土地に関する建物収去土地明渡の訴を提起したので、抗告人の勝訴は確実であつたが、執拗な相手方らの態度に困惑し、やむなく和解をしたという事情がある。

(三) 元来、本件借地権は通常の非堅固建物の所有を目的とするものであるため、その存続期間は昭和五一年九月一五日までであり、四年も先でなければ期限が到来しないのに、相手方らは更新拒絶につき正当な事由があるとして、なおも昭和四七年一一月にいたつて東京地方裁判所に対し本件土地に関して建物収去土地明渡の訴を提起した(同庁昭和四七年(ワ)第九、七六六号)。正当事由の存否は事実審の口頭弁論終結時を墓準として判断されるべきであるのみならず、本件建物はいわゆる本建築であつて今後数一〇年間も存立に耐えうるものであるため、法定更新されるべき借地権であることは明らかである。したがつて、相手方らの抗告人に対する右訴の提起は、明らかに前記の裁判間近に迫つた本件借地条件変更申立事件の処理を遅延させようとして、借地非訟事件手続規則一二条の規定を濫用する意図に出たものであり、抗告人の正当な権利を侵害しようとするものである。

(四) 以上の次第であるから、本件においては、相手方らより右訴が提起されても、借地非訟事件手続規則一二条は適用されるべきではない。仮に右規定の適用があるとてしも、権利の濫用であるから、本件借地非訟事件手続の中止は許されるべきではない。

というのである。

よつて案ずるのに、事情変更による借地条件の変更その他のいわゆる借地非訟事件の申立てがあり、その先決事項たる借地権の存否につき争いがある場合、右非訟事件を審理する裁判所が独自の立場で借地権の存否を判断し、その判断にもとづいて右非訟事件の裁判をするか、それとも同事件の手続を中止し右借地権の存否の争いに関する訴訟その他の事件の結果をまつべきかは、同裁判所において借地権の存否に関する訴訟裁判所と非訟裁判所の判断がくい違う蓋然性の程度、訴訟その他の事件の種類、内容、進行の程度、借地非訟事件の進行の程度、同事件を緊急に処理すべき必要性その他一切の事情を総合考慮して決すべきことであり、その決定手続自体に借地非訟事件手続規則一二条一項に定める手続中止の要件を欠く事由(たとえば、右先決的事項の争いに関する訴訟その他の事件の申立てが明らかに適法要件を欠く場合)が存在しないかぎり、右いずれかの決定を不当として不服を申立てることは許されないものと解すべきである。これを本件決定についてみるのに、右要件の欠けていることを認めることはできないし、抗告人主張のような事情があるとしても、これをもつて相手方らの訴提起を権利の濫用または前記手続規則一二条の規定を濫用する意図のもとに出た抗告人の正当な権利の侵害行為であるとすることはできない。

してみれば、原決定を不当とする理由がなく、結局相当というのほかはなく、本件抗告は理由がないのでこれを棄却することとし、主文のとおり決定する。

(畔上英治 岡垣学 兼子徹夫)

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