東京高等裁判所 昭和47年(ラ)734号 決定
以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。
〔決定理由〕抗告人ら代理人は、主文第一項<注・「原決定を取り消す」>と同旨の裁判を求め、抗告の理由として主張するところは、「抗告人らは昭和四七年九月六日債権者・殖産住宅相互株式会社に対して、本件競売申立の原因である債権元本および遅延損害金ならびに本件競売手続費用に充てるため金三〇〇万円(正確な金額が不明なため、前記債権額および費用を若干超過する)を現実に提供したが、債権者はなんら正当な事由なくしてその受領を拒絶したので、抗告人らはやむなく右金額を静岡地方法務局に供託した。かように、債権者の本件競売申立の原因となつている債権はすべて消滅しており、本件競売は許されないため、本件競落許可決定の取り消しを求める。」というのである。
本件記録にもとづく調査および相手方の主張するところによると、相手方(債権者)の抗告人(債務者兼所有者)らに対する本件競売の申立債権額(残額)は元本二四八万八、三五二円、遅延損害金二三万六、七八六円であり、本件競売手続費用は一六万八、一三六円であるところ、以上合計二八九万三、二七四円を超過する金三〇〇万円を抗告人らにおいて相手方に対して弁済のため現実に提供したが、相手方は「最高価競買申出人の同意がない限り競売申立の取下げが競売裁判所で受理されないので、弁済を受けられない」という理由でその受領を拒絶したこと、それで抗告人ら代理人において右同日前記債務の弁済にあてるため静岡地方法務局に金三〇〇万円を弁済供託したので本件競売の基本債権が消滅しとして右供託書の正本を当裁判所に提出したことが認められる。
ところで、競売法による不動産任意競売手続において、競落許可決定の言渡しがあつた後でも、その決定に対し適法な即時抗告がなされ、いまだその決定の確定および競落代金の納付がない間に競売申立の原因たる被担保債権全部が弁済により消滅した旨を証する弁済証書(民事訴訟法五五〇条四号参照)が提出されたときは、同競売は結果的に不適法なものとなり、それにもとづく競落は許されないことになるものと解するのが相当である。本件において、抗告人らが昭和四七年八月三〇日に言い渡された原競落許可決定に対し適法な即時抗告を提起していることは本件記録に徴して明らかであり、また前記認定にかかる供託書の正本の提出は、弁済証書の提出に準ずるものということができる。してみれば、原競落許可決定のあつた後競売申立の原因たる被担保債権全部が弁済供託によつて消滅していることは前記認定のとおりであるから、原競落許可決定は結果において取り消しを免れない。
(畔上英治 岡垣学 兼子徹夫)