東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)120号 判決
一 本願発明の補正後の要旨が請求原因の二、(二)に記載のとおりであることは当事者間に争いがない。そして成立に争いのない甲第八号証と同第一一号証の二によれば、右補正の眼目は、「吊軸受(7)を、少くとも三本の同じ長さの連接棒(16)によつて、その両端部の自在接手(17)を介して、持上磁石(4)の鉛直軸(6)から半径方向に同じ距離のところで、上部保持フレーム(15)に、結合する」という構成を採ることにより、吊軸受が保持フレームに対してどのような位置にあつても、少くも三本の同じ長さの連接棒によつて結合されているため、吊軸受は常に保持フレームと平行な関係に維持されることによつて、水平に保たれるというにあると認められる。したがつて、本願発明における持上げ磁石(4)の水平維持の原理は、少くとも三本の同じ長さの連接棒(16)により吊軸受(7)を保持フレーム(15)と平行関係におくという幾何学的な条件に基づくものであることが明らかである。
これに対し、成立に争いのない甲第一〇号証によれば、第二引用例における掃除部材は、下側の自在接手装置の二つの直交するピン(8)および(10)によりそれらのピンの軸心線の交点の周りに全ての方向に回動自由に懸吊されていて、上側の自在接手及びこれを下側の自在接手と連結する二本の案内棒は掃除部材を垂直にする作用には何ら関与せず、掃除部材を垂直に維持する作用は専ら上記の交点の下方に存在する掃述部材の重心に垂直下向きに働く重力によるものであることが認められる。したがつて、第二引用例における掃除部材の垂直保持の原理は、支点と重心との関係による重力作用に基づくものであることが明らかである。
そうすると、第二引用例の装置における案内棒は補正後の本願発明の装置における連接棒と機能的に等価でないことはもちろんのこと、これら二つの装置が作用効果においても顕著な差異があることは見易いところである。すなわち、カバーが偏心付着したときに、補正後の本願発明の装置にあつては前記平行の原理によつて常に水平に維持されるが、これに反し第二引用例の装置にあつては、掃除部材を第一引用例の磁石に置き換えても、偏心付着したカバーにより重心が偏るために磁石の極面ひいてカバーを水平に維持することはできないことはいうまでもない。
二 以上の次第で、原告の主張は正当であつて、審決が掃除用部材を第一引用例の電磁石に置き換えた第二引用例の装置が偏心付着のカバーを水平に維持することができるとしたのは誤りであるといわなければならない。そうすると審決は誤つて前記補正を却下し、ひいて本願発明の要旨を誤認した違法があるというべく、取消をまぬがれない。
よつて、原告の本訴請求は理由があるから、これを認容する。