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東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)51号 判決

一 取消事由(一)について

原告は、本願発明は<省略>分周器を作動させない場合を含むものではなく、<省略>分周器を作動させる場合に限られると主張する。

原告はこの主張の根拠として、本願発明の特許請求の範囲に、「<省略>分周器を含む」という字句のあることを挙げており、成立に争いのない甲第九号証(本願特許公報)によれば、本願明細書の特許請求の範囲には、「<省略>分周器を含む」という字句があることが明らかである。しかしながら、前記甲第九号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明には、「第一図は、本発明による自動リズム演奏装置のブロツク図、第二図は本装置に使用するダイオードマトリツクス回路図、第三図は2、4、<省略>拍子の時のパルス配分図、(中略)、第六図は3拍子の時のパルス配分図、」という記載、および「リズム切換スイツチ11で、ダイオード・マトリツクス10からの8個のパルスを楽音発振器群に配分することによつてワルツ、タンゴ、マーチ等のリズムを作る事が出来る。フリツプ・フロツプ2、3、4を使う様にスイツチ8を切換えると、ダイオード・マトリツクス10の出力は1~8の順序で出るので2拍子、4拍子系のリズムは作れるが、3拍子系が作れないので、フイードバツクによつて、<省略>分周器を構成するフリツプ・フロツプ5、6をフリツプ・フロツプ2、3の間に入れる様に、スイツチ8を切換えスイツチ8と連動するスイツチ9を開いて、フリツプ・フロツプ4を無関係にすると、第六図の様な順に出力パルスが出るので3拍子のリズムが作れる。」という記載のあることが認められる。これらの記載によれば、本願発明の自動リズム演奏装置は、二拍子系のリズムも三拍子系のリズムも演奏できなければ完全なものとはいえないので、<省略>分周器は、構成要件として必須のものではあるが、これは、スイツチ8による切換使用が可能なものであつて、実際に使用するに当り、二拍子系のリズムを作る場合は作動させず、三拍子系のリズムを作る場合に作動させるものであるということができる。したがつて、特許請求の範囲の「<省略>分周器を含む」という字句は、本願発明において、<省略>分周器が必須の構成要件であることを意味するが、常に作動状態にあることまでは意味しないから、この字句を原告の主張の根拠とすることはできない。

また原告は、前記主張の根拠として、本願明細書の発明の詳細な説明においては、第三図のパルスを「順次パルス」として明記しているが、本願特許請求の範囲においては、「順次パルス」の字句はなく、第六図のパルスに相当する「組合せパルス」の字句しかないと主張する。

前記甲第九号証によれば、本願明細書の発明の詳細な説明においては、<省略>分周器を作動させない場合の第三図のパルスを「順次パルス」と称していることが認められる。しかし、他方本願明細書の発明の詳細な説明および図面には、「組合せパルス」という字句は全く使用されておらず、<省略>分周器を作動させる場合の第六図のパルスについても、単に「第六図は3拍子の時のパルス配分図」、「第六図の様な順に出力パルスが出るので3拍子のリズムが作れる。」と記載しているだけであることが認められる。したがつて、第三図のパルスが本願明細書の説明で、「順次パルス」と称されているからといつて、これが特許請求の範囲の「組合せパルス」ではなく、第六図のパルスのみがこれに当るなどということはできない。

本願特許請求の範囲の文脈からすると、「組合せパルス」とは、<省略>分周器を含むフリツプ・フロツプ分周器の出力信号を、ダイオードにより任意に混合したもので、それにより電子的音源発振器を励起させるためのものを指していることは明らかである。なお、ここにおける「<省略>分周器を含む」という字句が<省略>分間器を作動させない状態を含む概念であることは前記のとおりである。そして、本願明細書および図面によれば、第三図のパルスは、ダイオード・マトリツクス10の出力側に現われるものであること、このダイオード・マトリツクスは<省略>分周器を含むフリツプ・フロツプ分周器の出力信号を任意に混合させるためのものであること、第三図のパルスも、リズム切換スイツチ11により楽音発振器群に配分してリズムを作るものであること、すなわち第三図のパルスにより電子的音源発振器が励起されることが認められる。してみれば、第三図のパルスも特許請求の範囲にいう「組合せパルス」にほかならない。したがつて、特許請求の範囲にいう「組合せパルス」が、第六図のパルスのみを意味し、第三図のパルスを意味しないという前提をとる原告の前記主張は、前提自体失当であるといわなければならない。

二 取消事由(二)について

原告の主張する本願発明の作用効果の顕著性は、本願明細書第三図のパルスが本願発明の内容に含まれないことを前提とするものであるが、この前提自体失当であることは前示のとおりであるから、この主張も採用できない。

三 取消事由(三)について

前記甲第九号証によれば、本願発明における電子的自動リズム演奏装置は、テンポ信号発生器、ゲート回路等のパルス技術を利用するものであることが認められる。一方成立に争いのない甲第一一号証の三、四によれば、第二、第三引用例は、いずれも「パルス技術入門講座」の一部として書かれていることが認められるから、パルス技術における初歩的事項を中心として解説するためのものであるということができる。そうすると、パルス技術を利用する自動リズム演奏装置を設計する技術者は、当然第二、第三引用例に記載された程度のことは知つていたものと認められ、これらの記載内容を自動リズム演奏装置に応用することは容易であるといわなければならない。したがつて、これに反する原告の主張も採用できない。

四 以上のとおり、本件審決には原告主張の違法はないから、その取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。

〔編註〕 本願発明の要旨は左のとおりである。

周波数の可変出来るテンポ信号発振器に<省略>分周器を含む、フリツプ・フロツプ分周器を直列に複数個接続し、各該フリツプ・フロツプの極性の相反する二つの出力信号をそれぞれに取出し、ダイオードの一方向性を利用して、相互に干渉をなくし、出力信号を混合し任意の組合せパルスを作り、電子的音源発振器を励起させることを特徴とした自動リズム演奏装置

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