大判例

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東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)58号 判決

一 前掲請求の原因のうち、本願考案について、出願から審決の成立にいたるまでの特許庁における手続、考案の要旨及び審決の理由に関する事実は当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張の取消事由があるか否かについて判断する。

成立に争いのない甲第二号証(本願明細書)に本件口頭弁論の全趣旨を合わせ考えれば、継電器においては、一般に磁路として導磁率の高い磁性材料が使用されるため、履歴現象により継電器を励磁する捲線電流が消滅しても、残留磁気が継電器の接極子を動作状態に保持するように作用してその復旧動作を遅らせるので、従来接極子と鉄心の間または接極子と継鉄との間に導電体たる燐青銅等の金属材料より成る非磁化板を置いて、磁路に非磁性体による一定の空隙を作り残留磁気を少なくして接極子の復旧動作に対する妨害をできるだけ少なくしていたが、これによると、継電器の捲線電流が消滅した場合に非磁化板に渦流が生じて接極子の復旧動作を妨げること、そこで、本願考案は、その要旨を前記のように構成し、非磁化板として金属材料に代えて絶縁材料たるプラスチツク材を使用し、これにより、少なくとも、非磁化板に渦流を生じさせず、接極子の復旧動作を良好にするとともに、継電器の動作時に発生する摩擦的衝撃音を相当僅少にするものであること、殊に、自動交換室などにおいて、多数の継電器が使用されるような場合には、本願考案による衝撃音減少の結果、騒音防止に役立つことが認められ、右認定を左右するに足りる証拠はない。

そして、審決は、電磁石において接極子と鉄心との当接面に絶縁弾性体を設けて当接時に発生する騒音を防止するようにすることが第二引用例に記載されていることを理由の一つとして、本願考案において、接極子と鉄心との間に非磁化板を設ける場合につき、考案の進歩性を否定したが、同引用例にはそのような記載がない。したがつて、審決の右判断は、結局、証拠による裏付けがないことに帰着する。この点に関し、被告は審決が右引用例を示すため「実公昭三二―八三七八号公報」と記載したのは「特公昭三二―八三七八号公報」の誤記である旨を主張するが、本件審判の手続において審決における後者の表示の文献が審理に上程されたことを認むべき証拠はなく、成立に争いのない甲第三号証によれば、むしろ、原告は本件審決前の昭和四十七年一月十七日付意見書を特許庁に提出し、これにより審決における前者の表示の文献を挙げて本願考案に無関係である旨を申述したほどであることが認められるとともに、成立に争いのない甲第一号証(本件審決謄本)により審決の理由中の記載全体を綜合的に検討しても、これには後者を表示すべくして誤つて前者を表示したことを窺わせる記載はないから、仮に後者の表示の文献に審決引用の記載があるとしても、その一事だけで審決に被告主張のような表示上の錯誤があつたことを認めることができず、他にこれを肯認するに足りる証拠はない。

被告は、本願考案の接極子と鉄心との間に非磁化板としてプラスチツク材を用いる構成は第一引用例によつただけでも容易に考案することができる程度のものであるから、第二引用例に審決認定の記載がないだけで審決の判断が左右されるものではない旨を主張するが、本願考案の目的、技術的思想並びに作用効果に関するさきに認定の事実によれば、本願考案の接極子と鉄心または継鉄との当接時における騒音を防止する効果を単なる付随的なものと考えるのは当らず、他方において、成立に争いのない甲第五号証(第一引用例)によつても、第一引用例には、接極子と鉄心との当接面に絶縁弾性体を設けて当接時に発生する騒音を防止するようにするという、審決が第二引用例に記載されているとした事項の記載があることを認めることができないから、被告の右主張は採用することができない。

してみれば、審決は、証拠に基づかないで本願考案を容易に推考することができ、登録に値しないと判断したものというべきであるから、違法たるを免れない。

三 よつて、その違法を主張して本件審決の取消を求める原告の本訴請求を理由があるものとして認容する。

〔編註〕本願考案の要旨は左のとおりである。

継電器の非磁化板としてプラスチツク材を使用した継電器の構造

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