東京高等裁判所 昭和47年(行ケ)79号 判決
(争いのない事実)
一 本件に関する特許庁における手続の経緯、本願考案の要旨及び本件審決理由の要点が、いずれも原告主張のとおりであることは、本件当事者間に争いのないところである。
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本件審決は、本願考案の構成及び作用効果については、引用例及び周知事実には全く開示するところがない点を誤認し、本願考案をもつて引用例及び周知事実から当業者の極めて容易に考案をすることができるものとした点において判断を誤つたものである旨主張するが、右主張は、以下に説示するとおり、理由がないものといわざるをえない。すなわち、成立に争いのない甲第二号証(本願実用新案登録願書添附の明細書)及び第三号証(同明細書添附図面)によれば、本願考案は、任意の高さと幅を有する居室又は事務室の室内に設ける劃壁及び棚壁あるいはその一部分を室とする場合の分離されるべき部分のための劃壁及び棚壁について、これらの壁は、縦と横の寸法が、それぞれきめられた一定の最小基準となる長さ及びその倍数にあたる長さをもつて規格的に単一化された箇々の規格構造部材として作られているものであり、したがつて、劃壁材と棚壁材とをその希望する箇所に単一に、あるいは組み合わせて壁として設置することができるのみでなく、取り付けた劃壁材を他の劃壁材若しくは棚壁材と、あるいは棚壁材を他の棚壁材若しくは劃壁材とそれぞれ交換して取り付けることができ、また、劃壁材には前記規格構造部材の一箇又は数箇に相当し、かつ、必要な大きさを有する扉を含み、この扉を劃壁材又は棚壁材とともに設置し、あるいは他の劃壁材又は棚壁材と交換して扉の位置を変えることができるなど劃壁(扉を含む。以下同じ。)と棚壁の変化及び置換えを、いつでも、かつ、容易に行うことができるように構成されていること、しかして、前記のような構成をとることにより室内の与えられた空間で多種多様の棚、扉の配置をつくり出すことができ、劃壁及び棚壁の変化及び置換えは、いつでも、かつ、容易に行うことができるという実用上の効果を奏するものであることを認めることができる。
ところで、成立に争いのない甲第六号証によれば、引用例のものも、高さ及び幅の寸法においてそれぞれ一定の高さ及び幅のモジユールを有し、単一化され互いに交換することができる規格構成材を作り、この構成材を組み合わせたり並べたりすることによつて建物中の与えられた空間をみたすという技術思想が開示されていること及び右に「建物中の与えられた空間をみたす」とは、建物の天井部分、床部分及び壁部分等を規格構成材をもつて構成することを示唆するものであることを認めるに十分であり、叙上認定したところに徴すると、引用例に記載の規格構成材を用いて天井、床及び壁などを構成する場合に、これら規格構成材を互いに交換し、組み合わせて並べることにより多種多様の天井、床及び壁などが得られることは明らかであり、これに陳列棚、ロツカーなどを組み合わせ並べて隔壁を構成し、大部屋を所要の小部屋に区切ることが事務室、居室などにおいて普通に行われ、本願出願前周知に属すること(この点は原告の認めるところである。)を総合すると、本願考案のように、規格構成材を居室又は事務室に内設する劃壁及び棚壁の構成に使用することは、引用例のものから、極めて容易に想到しうるところというべく、本願考案における規格構成材を互いに組み合わせて並べることにより多種多様の劃壁及び棚壁が得られるという実用上の効果も、引用例のものから当然予測しうる効果を出ないものとみるを相当とし、本願考案における当初から劃壁と棚壁とを組み合わせる形で規格寸法によつて互換性を有するように構成することに格別の困難性があるものとは到底認めることはできない。したがつて、本件審決には、原告主張のような違法の点はない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告の本訴請求は、理由がないものというほかはない。よつて、これを棄却する。
〔編註〕 本願考案の要旨は左のとおりである。
高さ及び幅の寸法においてそれぞれ一定の高さ及び幅のモジユールを有し、単一化され互いに交換されうるあらかじめ作られた規格構成部分からなる居室及び事務室内に構成側で内設するために供される劃壁及び棚壁。