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東京高等裁判所 昭和47年(行コ)37号 判決 1973年9月18日

東京都目黒区目黒一丁目三番二三-一二二号

控訴人

朝日株式会社

右代表者代表取締役

長田義雄

右訴訟代理人弁護士

秋山昌平

同都同区中目黒五番二七号

被控訴人

目黒税務署長

小林猛

右指定代理人

中村勲

柴田定男

柳沢正則

泉類武夫

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

(申立)

一、控訴人は、「原判決を取り消す。控訴人の昭和四〇年七月一日から同四一年六月三〇日までの事業年度分の法人税につき、被控訴人が同四二年三月二八日付でした更正処分(たゞし東京国税局長の審査裁決による一部取消後のもので、所得金額四、一三四万七、〇三八円、法人税額一、四六八万九、九〇〇円としたもの)のうち、所得金額一、五二二万二、一四九円、法人税額五二八万四、九五〇円をこえる部分は、これを取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。」

との判決を求めた。

二、被控訴人は、控訴棄却の判決を求めた。

(主張、証拠)

当事者双方の主張、証拠の提出、認否等は、左記のほか、原判決の事実摘示に記載するとおりであるから、これを引用する。

一、控訴人

1  別紙控訴人の主張に記載のとおり主張する。

2  甲第七号証の一、二を提出する。

3  乙第一二号証の成立を認める。

二、被控訴人

1  別紙被控訴人の主張に記載のとおり主張する。

2  乙第一二号証を提出する。

3  甲第七号証の一、二の成立を認める。

理由

一  当裁判所も、原審と同様に、控訴人の本訴請求は失当であるから棄却すべきであると判断する。その理由は、左記のほか、原判決の理由に記載するとおりであるから、これを引用する。

1  原判決一八枚目表(記録三九丁)六行目の後に「なお、甲第三号証契約書第四項にいう、「建築直接原価」とは本工事であると附帯工事あるいは追加変更工事であるとを問わず建築工事そのものの費用をいい、工事代金借入の利息その他の工事代金調達の費用などの間接費用を除く趣旨と解するのが自然であり、すなおである。」を加える。

2  原判決一九枚目裏(記録四〇丁)七行目の後に、行をかえて、次のとおり加える。

「控訴人は、本件マンシヨンの総建設原価を算出するに際しては敷地のうち一九二・二坪価額八二七万五、〇〇〇円を控除すべきであることを前提として、別紙控訴人の主張の二に記載のとおり主張する。しかし、控訴人が、原審において、本件マンシヨンの敷地全部(控訴人が別紙で主張する一九二・二坪を含む敷地全部)の取得価額に建築直接原価を加えた金額を基準としてマンシヨンの建設原価を主張しているのみならず、原審における証人長田高明の証言その他弁論にあらわれた証拠によつては、控訴人がその主張する前記一九二・二坪を自己の資産に留保しこれを除外して本件マンシヨンの建設原価を算出したと認めるに足りない。そして、前記乙第六・七号証、前顕証人長田高明の証言、本件弁論の全趣旨に徴すると、前記一九二・二坪はその他の部分と一体不可分の関係にある本件マンシヨン敷地約四〇〇坪の一部として取得されたものであり、現に本件マンシヨンの譲受人のため本件マンシヨンを所有するのに必要不可欠の土地としてその者の利用に供されていることが認められる。これらの事実に徴すれば、本件マンシヨンの建設原価を算出する際に控訴人主張の前記一九二・二坪の価額を控除するのは相当でないと認められる。してみれば、これと異なる前提に立つ控訴人の前記主張は失当である。

のみならず、仮に控訴人主張の一九二・二坪価額八二七万五、〇〇〇円を控除して本件マンシヨンの建設原価を算出して訴外長田庄一が譲渡を受けた二五戸分の原価を算定し、これを基礎として本件係争年度(昭和四〇年七月一日ないし同四一年六月三〇日の事業年度)における控訴人の所得金額を計算しても、この額は本件裁決で維持された所得金額四、一三四万七、〇三八円をこえることになる。すなわち、前記認定(原判決一四枚目表)の本件マンシヨンの建設原価金二億七、六一四万四、九九三円から控訴人主張の前記金八二七万五、〇〇〇円を控除して建設原価を計算し直すと金二億六、七八六万九、九九三円になり、これを訴外長田の取得した二五戸分につき建築坪数比によつて按分して算出し(長田の取得した坪数が四一パーセントであることは控訴人の自認するところである)、これから訴外長田の二五戸分の譲受代金八、八二一万五、三九〇円を控除して(原判決一九枚目表裏参照)同人に対する寄附金と認定する額を算出し(法人税法第三七条第六項)、同条第二項、同法施行令第七三条第一項により右寄附金のうち損金不算入額を算定し、この算定額に控訴人が本件係争年度の所得であることを自認する金一、五二二万二、一四九円を加算し、さらに控訴人が自己の資産として留保したことを主張する前記土地一九二・二坪の価額金八二七万五、〇〇〇円を加算して、控訴人の本件係争年度における所得金額を計算すると、その額は本件裁決で維持された金四、一三四万七、〇三八円を超えることが計数上明らかである。(なお、被控訴人の主張にもとづいて右のような所得金額の計算をすることが更正増すなわち新たな課税を行うことにならないことは言を俣たない。)してみれば、別紙控訴人の主張は、いずれにしても失当である」。以上のとおり加える。

二、よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八九条第九五条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 久利馨 裁判官 栗山忍 裁判官 館忠彦)

控訴人の主張

一、共同事業の利益配分について

(一) 本件共同事業の利益配分については、共同建設契約書(昭和四〇・三・二五・甲第三号証)第四項の定めに従い、訴外長田庄一が土地代金及び建築直接原価を基準としてマンシヨン二五戸を取得するのが本件契約当事者の真意であり、かつ正当であると控訴人は確信する。しかし今日において第三者的立場から観察すれば、同項の約定は、控訴人と訴外長田庄一との間に三五と二五の割合で利益を(又は損失を)配分する趣旨であると解せられなくもない。

(二) この配分によるときは、訴外長田庄一への配分率は、六〇分の二五即ち、四一パーセントである。また分割合意書(甲第四証)による分割においても訴外長田庄一はマンシヨン九一九・五二坪中三八二・八六坪を取得しており、その割合は四一パーセントである。(甲第二号証三丁一四行)

(三) 本件共同事業の利益は、次の通り総額五六、一八一、七五九円である。

1 控訴人の所得 一五、二二二、一四九円

被控訴人が本件事業年度につき認定した所得のうち寄付金限度超過額を控除したものである。

2 資産計上洩による利益 八、二七五、〇〇〇円

本件マンシヨン敷地として購入した土地四〇〇坪(五三、〇五〇、〇〇〇円)のうち分譲することなく、控訴人において保有し、現在及び将来にわたり使用、収益、処分される土地の評価額(一九二・二坪)であるが、控訴人が誤認して計上洩となり、昭和四五年三月資産として計上したものである。(甲第七号証)

3 訴外長田庄一の収益 三二、六八四、六一〇円

訴外長田庄一の売戻額と分割合意額との差益である。

(四) 前記(二)及び(三)から訴外長田庄一の利益配分額を計算すれば総利益五六、一八一、七五九円の四一パーセント即ち二三、〇三四、五二一円となる。しかして現に同人が取得した利益は三二、六八四、六一〇円であるから、その差額は九、六五〇、〇八九円である。

したがつて前記(一)の趣旨による配分とすれば、右九、六五〇、〇八九円が寄付金とみなされ、うち九、三二六、六八七円が寄付金限度超過額として所得に加算され、本件所得総額は二四、五四八、八三六円、これに対する税額は八、六四二、二八〇円となるものと認められる。

二、建設原価について

仮りに、原判決の趣旨に従い、共同事業の利益配分を否定し、総建設原価を基準として譲渡すべきものとしても、控訴人と訴外長田庄一とに按分すべき原価は、分譲マンシヨン部分についての建設原価に限らるべきであつて、控訴人が使用、収益する施設部分の建設費用は除かれなければならない。しかしてこの按分すべき原価は、課税権者において立証すべきものであるが、少なくとも控訴人が現に保有し、使用収益する土地一九二・二坪、価額八、二七五、〇〇〇円については(甲第七号証)最も明白なものとして総建設原価から除算して按分すべきものであることを指摘、主張する。

被控訴人の主張

控訴人は、「控訴人が現に保有し、使用収益する土地一九二・二坪価額八、二七五、〇〇〇円については総建設原価から除算して按分すべきである」旨主張する。この主張の趣旨は、訴外長田庄一が譲渡をうけた二五戸分の原価の算出に、控訴人が資産として保有する土地代が含まれている結果、右二五戸分の原価が不当に高く認定されているといわれるもののようである。

しかし、控訴人は第一審の口頭弁論において、本件マンシヨンの総建築費が二七六、一四四、九九三円であり、二五戸分に対するこれの按分額(原価)が一一四、八七六、三一七円であることは争つておらなかつたところであるが、かりに控訴人の主張の如く、控訴人が分譲と関係なく使用収益している土地がありこの評価額がそのとおりであると仮定したとしても、それであれば控訴人が主張する土地八、二七五、〇〇〇円については、本来本件係争事業年度において当然資産に計上すべきものであるにもかかわらず同事業年度の決算では分譲資産という科目をもちいて売上原価勘定として総建築費二七六、一四四、九九三円を含めた全額を損金経理されている(乙第一二号証参照)。したがつて、控訴人が主張されるところに基づいて訴外長田庄一に譲渡した二五戸分の取得原価を計算し直すとしてこの金額を除算するとすれば、次表のとおり右金額を売上原価の過大計上として分譲資産(売上原価勘定)の金額から控除することとなり、それに伴う必要な計算をすれば次のとおりとなり控訴人の当該年度の所得金額は裁決で維持された所得金額を上回ることとなるのであり控訴人は自ら不利益な主張をしていることに外ならない。

すなわち、控訴人の主張するところによつて本件係争事業年度の控訴人の所得金額を計算し直すと、その所得金額は次表のとおり四六、二一六、九四七円となり、裁決で維持された所得金額四一、三四七、〇三八円を超えた所得額があつたこととなるのである。

<省略>

なお、本件審査裁決における、本件マンシヨンの取得原価(右表の<1>)の計算根拠について付言すると、控訴人の昭和四〇年七月一日から昭和四一年六月三〇日までの事業年度の損益計算書に計上されている売上原価中の分譲資産価額二七九、六三八、四一四円から、三共マンシヨン分の取得原価と認められる四、五四三、四二一円を差し引き支払手数料として損金に計上した本件マンシヨンの土地取得にかかる支払手数料一、〇五〇、〇〇〇円を加えて二七六、一四四、九九三円としたものである。

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