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東京高等裁判所 昭和47年(行コ)54号 判決 1973年9月14日

控訴人

寺沢迪雄

外二名

右三名訴訟代理人

宮沢洋夫

外一名

被控訴人

茨城県建築審査会

右代表者

中込昇司

右指定代理人

岩渕正紀

外五名

主文

本件控訴をいずれも棄却する。

控訴費用は、控訴人らの負担とする。

事実

控訴人ら代理人は、「原判決を取り消す。本件を水戸地方裁判所に差し戻す。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、「控訴棄却」の判決を求めた。

当事者双方の主張および証拠の関係は、原判決事実摘示と同一であるから、これを引用する。

理由

当裁判所も、本訴請求は不適法として却下すべきものと判断する。

控訴人らは、本件却下裁決の審査手続に違法があると主張するものであるが、右違法事由の有無の審理に先立ち、控訴人らに右裁決取消しの訴えの利益があるか否かが審究されねばならない。

そもそも裁決取消しの訴えは、棄却もしくは却下裁決が取り消されることにより、再度審査庁の実体的審査をうけることを目的とする。そして、審査庁の実体的審査をうけるためには、原処分が違法または不当であることによつて、審査請求人が直接に自己の権利又は利益を侵害される関係にあることが必要である。

これを本件についてみれば、本件は建築基準法に基づく建築主事のなした建築確認処分を争うものであるところ、建築基準法に基づく建築確認は申請にかかる建築物の計画が同法又は他の建築物に関する規定に適合することを公権的に確認する行為であるから、控訴人らに、右確認にかかる建築物自体により、直接に、自己の住居の日照、通風を妨げられるか、もしくは右建物の火災または倒壊によつて自己の住居が類焼または損壊する危険があることを必要とする。

ところが、控訴人らは、その申立て自体からも明らかなように、本件確認にかかる建築物の所在地である茨城県那珂郡東海村からは遠く離れた水戸市または勝田市に住居を有するものであつて、叙上の危険を受ける関係にある者ではない。

もつとも、控訴人らは、右建物に収容される核燃料再処理施設の危険性を云云し、本件建物は右施設から放出される放射性物質の防除に十分な敷地・構造・設備を備えていないが故に、控訴人らは右放射性物質の脅威にさらされているものであると主張するが、このような安全性の審査は、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律にもとづき科学技術庁長官の担当するところであつて、建築主事の司るところではないから、右のような危険をもつて建築確認に対する審査請求の利益となすことはできない。

そうすれば、控訴人らは、本件却下裁決の取り消しを求める利益を有しないものであるから、これを却下した原判決は結局において正当であり、本件控訴は理由がない。

よつて、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第九五条、第八九条、第九三条を適用して、主文のとおり判決する。

(満田文彦 鰍沢健三 鈴木重信)

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