東京高等裁判所 昭和48年(う)1002号 判決
被告人 若林けい子 外五名
〔抄 録〕
所論前段は、原判決が原審公判廷に証人として尋問を受けなかった申學雄、金順成、朴永培の検察官に対する各供述調書を証拠に採用したことは、証拠能力のない証拠を採用した違法がある、というのである。
記録を検討してみると、所論の申學雄、金順成、朴永培の三名は、いずれも韓国大使館職員であって、いわゆる外交特権を行使できる地位にあり、わが国の法廷において証人として証言する義務を負わない者であることが明らかである。従って、右の者らが、その外交特権を行使して証言を拒否した以上、公判期日においてそれらの者の供述を得ることができないわけであるから、それらの者の検察官に対する供述調書が存し、それについて信用性の情況的保証が存するものと認められる場合には、刑訴法三二一条一項二号前段によりこれを証拠とすることができるものと解すべきである。本件において、右三名の者が外交特権を行使して原審のした証人喚問に応じなかったことは記録上明らかであるし、信用性の情況的保証についても疑いを容れる余地はないと認められるのであるから、原審が右三名の者の検察官に対する各供述調書を前記刑訴法の規定により証拠として採用したことに違法のかどは認められない。論旨は理由がない。
(荒川 谷口 時国)