東京高等裁判所 昭和48年(う)1665号 判決
被告人 内田泉
〔抄 録〕
被告人が原判示のように二回に、各務弘昭と共謀のうえ、または単独で、ゴールデン会館および娯楽センターにおいてパチンコ玉四一四個および約一、一〇〇個を窃取した事実を肯認するに十分であり、当審における事実取調の結果を考慮に入れても、右認定を左右するに足るものはない。なるほど、被告人が右各パチンコ店において最初、それぞれ料金を支払ってパチンコ玉七〇個宛を入手したことは、所論のとおり認められるが、右各証拠によれば、右いずれの場合も、被告人は当初から、磁石を用いてパチンコ機械の当り穴から玉を取得していたものであり、また客の打った玉は当り玉になってもはずれ玉であっても、自動的にそのパチンコ機械から別途に店内の施設に入り、当り玉の場合には打った玉とは別個の景品玉が出てくることが認められるのであるから、被告人が当初正当に入手したパチンコ玉七〇個が前記窃取したとされる玉の個数に含まれるとする論旨は、前提を欠き失当といわねばならない(なお所論指摘の、各務弘昭がゴールデン会館において当初正当に入手したパチンコ玉三五個については、被告人が磁石を用いた際右玉を利用したとの証拠が十分でないのみならず、仮りにこれを利用したとしても 被告人の当初入手した七〇個同様、本件窃取した玉の個数に影響を及ぼすものではない。)。仮りに遊戯の最終時において当初の玉七〇個のうち若干が残っていたとしても、その余の、不正な方法により取得した玉数と混入しているのであるから、その個数はいくらであるかを区別することは不可能であるといいうべく、従ってこのような区別の不可能である本件の場合においては、全部の玉を全体として観察するのほかなく、被告人が所持したパチンコ玉全部について窃盗の既遂罪が成立するものと解するのが相当である。<中略>
しかし本件におけるように、パチンコ遊戯場において、磁石を用いて不正な方法によりパチンコ機械の当り穴からパチンコ玉を取得する所為は、その遊戯場経営者の不知の間にその意思に反してその支配を排除し、玉の所持を自己に移すものであり、しかも行為者においてその玉を更に使用して遊戯を続けるか、または景品と交換するかは自由であるから、右のような場合には、当り穴から玉を取得するとき玉自体に対する支配は右行為者に移るものと解するのが相当であり、本件については、所論のような店舗の構造、監視員の配置状況などのほか、玉が当該店においてのみ経済的価値を有するものであることなどを考慮しても、被告人が当り穴から本件パチンコ玉を取得したときその玉は被害者たるパチンコ店経営者小池栄三の事実上の支配を離れて被告人の支配内に移ったものというべきであるから、窃盗の既遂罪をもって問擬されることは当然である。
(石田一 菅間 柳原)