大判例

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東京高等裁判所 昭和48年(う)2498号 判決

被告人 斉藤秀一

〔抄 録〕

このように、本件強盗殺人が、当初から被害者を殺害する意図で行われたものと認められないことは、その犯情を定めるうえで相当程度斟酌すべき事実であるということができ、また、本件強盗殺人の結果については、被害者の遺族の被害感情、その及ぼした社会的影響をもあわせ考えると、きわめて重大であることは、さきに判示したとおりであるけれども、一面において、被告人が右犯行により取得した金員は、約六〇〇〇円に過ぎなかったのであり、右犯行の犠牲となったのが被害者一名だけであったのは、不幸中の幸いであったということができるのである。さらに、被告人の犯罪性ないしは反社会性についてみると、被告人は、これまで数多くの窃盗を犯してきた他に、本件を含めて三回にわたり強盗を犯したものであるが、本件強盗殺人を除いては凶器を使用しておらず、本件強盗殺人において凶器を使用して被害者を殺害したのも、さきに判示したように、被害者の予期しなかった態度に気が動てんし、たまたまその場に菜切庖丁があったために、とっさに行ってしまったものと窺うことができ、したがって、被告人は、犯罪性とくに盗癖が顕著であるとはいえ、必ずしもその性格が残忍であって本件強盗ないしは強盗殺人のような凶悪な犯罪を反復して犯す危険性が定着しているものとは認められないのであって、また、被告人は、さきにも触れたように、昭和四五年八月前件の服役を終えた後は、被告人なりに更生のための努力をした跡を認めることができ、結婚生活が破たんしたことと被告人の意志の弱さから、またも本件各犯行を犯してしまったものの、現在自分の犯した大罪につき相当程度反省、悔悟しているものと認められるのである。

以上に考察したところを総合すると、本件各犯行とくに強盗殺人の犯行は、まことに悪質かつ重大な犯行であるというべきであるけれども、強盗殺人のうちの殺人については計画的に行われたものではないことなど、その犯情に酌量すべき余地も認められるのであり、したがって、本件については、当審における事実の取調の結果を参酌しても、なお、あえて原判決を破棄してまでも被告人に対しその生命を奪う死刑を課すべきであるものと断定することはできないのであって、むしろ、被告人を無期懲役に処した原判決の判断を尊重し、被告人に対し、獄中にあって被害者の冥福を祈りながら、しょく罪の実を尽くさせるのが相当であると考えられるのである。論旨は結局理由がないことに帰する。

(真野 吉川 竹田)

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