東京高等裁判所 昭和48年(う)2535号 判決
被告人 川島雄次 外四名
〔抄 録〕
記録によれば、原審第五回公判期日において、左陪席裁判官が大谷剛彦から藤井一男に交替したが、同期日には公判手続の更新はもとより、何らの実質審理も行なわれなかったこと、原審第六回公判期日も前同様の構成で行なわれたが、同期日において、当日不出頭の被告人桐原こと菊地を除く全被告人につき前記裁判官の交替に伴う公判手続の更新が行なわれたこと、右被告人桐原こと菊地については、その後、同被告人が初めて出頭した原審第八回公判期日において、裁判長が同被告人に被告事件に対する陳述の機会を与えるなど同被告人の関係で実質審理がなされていながら、同期日の公判調書には、同期日に同被告人につき前記裁判官の交替の関係で公判手続の更新がなされた旨の記載がない。また、その後の期日の公判調書にも、右交替の関係で同被告人につき公判手続の更新のなされた記載は見当らない。そうすると、原審は被告人桐原こと菊地につき右裁判官の交替の関係で公判手続の更新をしなかったものといわざるを得ない。しかし、原審第八回公判期日において被告人桐原こと菊地につき更新されるべき公判手続の内容は、起訴状の朗読と起訴状の釈明問題だけであって、心証形成に直接関係のない訴訟行為に過ぎないうえ、その後における裁判所の構成の変更により、右被告人についても原審第一三回及び第一六回の公判期日で公判手続の更新が適法に行なわれていることなどの各事実が記録上明らかである。以上認定の事実関係にかんがみると、前記の公判手続の更新をしなかった原審の訴訟手続の瑕疵は、その後になされた右公判手続の更新によって治癒され、結局、原判決に影響を及ぼさなくなったものと解するのが相当である。この点に関する論旨は理由がない。
(石田 小瀬 南)