東京高等裁判所 昭和48年(う)2858号 判決
被告人 森英樹 外一名
〔抄 録〕
原判決は、公訴事実のとおり、昭和四六年五月二八日夜、東京水道労働組合その他の組合員らが、日比谷公園附近から三年町交差点などを経て西新橋交差点附近に至る道路上において、東京都公安委員会が付した許可条件に違反し、道路幅いっぱいになるなどしてだ行進をした際、被告人らが、共謀のうえ、その音頭をとるなどしてこれを指揮誘導したとの事実を認定し、右の被告人らの所為は本条例五条、三条一項但書三号に該当するとしたが、本件のように、許可条件違反が交通秩序維持に関する事項だけについて存する場合においては、道交法一一九条一項一三号所定の法定刑(三月以下の懲役または三万円以下の罰金)を超えて本条例の罰則を適用することは許されないとしたうえ、被告人両名をいずれも罰金三万円に処したものである。
たしかに、本条例が、その三条一項但書三号において、公安委員会が集団示威運動等を許可するに当たり、交通秩序維持に関する事項について必要な条件を付することができる旨定めているところ、他方道交法七七条一項四号、三項およびその附属法令によれば、所轄警察署長も、街頭行進(集団示威運動として行われるものも含まれる)を許可するに当たり、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図るため必要な条件を付することができるとされているのであって、本件のように、だ行進その他の交通秩序を乱す行為をしないことという条件は、本条例によるほか、道路交通法七七条によっても付し得ることになるわけであるが、その許可条件に違反した場合の処罰については、本条例がその五条で一年以下の懲役若しくは禁錮又は五万円以下の罰金と定めているのに対し、道交法では前記一一九条一項一三号が設けられていて、双方の法定刑にかなりの差がみられるのである。
しかしながら、それぞれの規制の趣旨、目的、規制の対象とされる行為の性質、態様、許可条件を付する機関、処罰の対象者の範囲、他の諸法令との関係等について、種々比較検討を加え、なお、集団行進及び集団示威運動に関する徳島市条例についての最高裁判所昭和五〇年九月一〇日大法廷判決(集二九・八・四八九)の趣旨をも参酌しながら考察すれば、その規制の対象となる行為については前記のように部分的に共通するものがあり、また、だ行進をしないことというような同一の許可条件に違反した場合の法定刑が本条例によると道交法によるのに比べ重くなるからといって、本条例三条一項但書三号および五条の規定は、道交法七七条、一一九条等と矛盾牴触するものではなく、これと両立し得るものであると解するのが相当である。(そもそも道路交通の安全といういわば一般的、技術的事項にかかわる道交法は、集団行動に際し不測の事態によって地域の平穏が破られることを防ごうとする特別な目的をもつ本条例のような各地の条例が、たとえ共通の事項に関係する場合でも、道交法の規定を特に制約するものでないかぎり、その目的のために独自の合理的な規定を設けることを容認しているものと考えられる。)
そうすると、弁護人の控訴趣意については、その詳細な所論に鑑み十分に検討してみても、本条例三条一項但書三号、五条の規定自体が道交法との関係において憲法九四条、地方自治法一四条一項ひいては憲法三一条に違反して無効であるとはいえず、論旨は理由がないことになるが、他方検察官の控訴趣意については、原判決のように、本条例五条の規定を本件のような事案については特に限定して適用すべきであるとする根拠はないのであって、結局原判決は右の点に関し法令の解釈適用を誤ったものといわざるを得ず、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由がある。
(戸田 大沢 本郷)