東京高等裁判所 昭和48年(う)375号 判決
判決理由
被告人今井らの多勢による坐り込みは、既に認定したような手段、態様のほか、スクラムを組み、また土足でヘルメットを冠るなどして行なわれているものであって、原判決が(弁護人の主張に対する判断)の項の二、の1、の(一)において説示しているように、少くとも一一時間以上という長時間にわたって排他的に前記三階連絡通路を占拠支配し、その間シュプレヒコールなどで気勢をあげ、更に労働歌を高唱するなどの行為に出ているものであることが認められるのであるから、被告人らの本件行為が、所論のように極めて平穏なものであったとは到底いえず、しかもこれによって静穏状態を保つべき病院の平穏を害したことは当然推測しうるところであり、患者への影響についても、所論のようにシュプレヒコールの声が聞こえた程度だけではなく、マイクを使用して大声でわめき立てたり、あるいは労働歌を高唱するなどしているものであって、患者の安全性をも害したものというべく、また仮りに所論のように、北病棟への移転自体は敢えて移転しようと思えば、他の場所を通行することによって行なえたとしても、被告人今井らの占拠支配した個所は、東大病院北病棟への移転に最も便利な通路であり、しかもその占拠支配により右の移転業務を実力で阻止しようとしたものであるから、その行為の手段、態様についての原判決の事実認定に所論のような誤りがあるとはいえない。そして、およそ行為の違法性の有無を判断する場合、たとえその目的に正当性を含んでいるとしても、その手段、態様に相当性を欠くときは、正当行為とはいえないことは明白であるところ、原判決が、既に認定したような被告人の本件行為の手段、態様の違法性に徴し、正当行為である旨の弁護人の主張を失当であるとして排斥したことは、判文上容易に看取できるのであるから、この点に所論のような重大な誤認はないものというべきであって、右の所論もまた採用できない。