東京高等裁判所 昭和48年(う)806号 判決
被告人 日栄電機産業株式会社 外一名
〔抄 録〕
所論は、被告人は申請小売価格を課税標準算定の基礎として物品税の申告をすれば適法であって、脱税になるものではないと信じていたものであるから、脱税の犯意が阻却される、というのである。
なるほど、前記認定のように被告人は、本件物品税の申告に際し明示小売価格を課税標準算定の基礎とすべきことを知りながらも、あえてこれより低価格の申請小売価格を基礎として算出した課税標準を記載した納税申告書を提出したものであるが、記録を調査し、これに当審における事実取調の結果を総合すると、被告人は右申告にあたり申請小売価格を基礎とすることも許されるものと信じていたことが認められる。そして、被告人がそのように信じたことは、いわゆる法律の錯誤に当るが、本件記録を調査しても、被告人が右のように信ずるについて相当な理由があったとする特段の事情は認められない。所論は、被告人は一定率適用の実務については全くタッチしていないし、また知識もないこと、本件で問題となった単価シールは小泉産業株式会社の一方的な販売政策により添付されたもので、そこには被告会社の意思の介入する余地が全くないものであること、税負担の公平という点からみると、課税は経済的利得に対してなされるものであること、その他物品税法の専門性、難解性に鑑みれば、本件のような場合には課税標準額は実勢小売価格と考えるのがもっともであるというのである。なるほど、被告人が一定率適用の実務にタッチしていなかったこと、右単価シールは小泉産業株式会社の一方的な販売政策により添付されたものであること、課税は経済的利得に対してなされるものであることは、所論のとおりであるけれども、これらの点と物品税法の専門性、難解性とを総合して考察しても、なお、被告人が右のように信じることについて、相当な理由があったと認められない。これと同旨の原判決は相当であって、論旨は理由がない。
(石崎 長久保 中野)