東京高等裁判所 昭和48年(ツ)96号 判決
なるほど原判決には、被上告人は原審において上告人(引受参加人)の抗弁または再抗弁に対する再抗弁または再再抗弁として、同上告人は被上告人に時効取得による所有権移転登記がないのを奇貨とし、不動産取得の対抗要件に関する法律論をもって本訴を有利に導くため本件土地を含む係争中の宅地部分のみを買受け、所有権移転登記を経由したものであり、同上告人のかゝる買受は公序良俗に反するものとして法律上の保護を与えるべきではない旨主張した旨記載されているが、右主張は被上告人の昭和四二年六月六日付準備書面に記載があり、右は原審第一〇回準備手続(同年六月六日午前一〇時)において陳述されながら、右上告人側からはかくべつの反論もなされず第一一回準備手続(同年九月五日午前一一時)において準備手続をする裁判官は準備手続の結果を要約書のとおり要約して準備手続を終結したこと、右要約書には被上告人側の前記主張が記載されず、単に右上告人側の登記欠缺の主張を否認するとのみ記載されていること、原審準備手続後の口頭弁論において当事者双方は準備手続の結果を陳述したものであることは記録上明らかである。以上の経過からみると、被上告人が右上告人側の登記欠缺の主張を争うものであって、その争う内容として前記の如き主張を持していたことはおのずから明らかであり、原判決が右要約調書にない前記主張を記載したとしても主張しない事実を主張したものとして記載したということはできない。そうだとすれば右主張はとくに同上告人が登記の欠缺を主張しうべきいわゆる背信的悪意者である旨の表現こそはしていないが、かかる主張を含むものと解しうるのみならず、これをどのように表現するかは結局は事実に対する法律的評価の問題に帰するから、原審が右上告人を登記の欠缺を主張しえない背信的悪意者と認定したことは相当であって、原判決の右認定はその挙示の証拠によって認定した事実および弁論の全趣旨によって首肯するに足り、その間右上告人の防禦権を害した事跡はうかがいえず、原判決に所論の違法はない。
(浅沼 田嶋 加藤)