東京高等裁判所 昭和48年(ネ)1296号 判決
本件保険約款第二章賠償責任条項第四条2号の免責事由「酒に酔った運転者によって運転されているとき」とは、控訴人主張のように、酒酔いのみが直接の原因となって事故が発生したときと限定的に解する必要はなく、酒に酔って正常な運転ができないおそれのある状態で運転されたときと解すべく、さらに、≪証拠≫によると昭和四七年一〇月以降右の免責条項は対人保険には廃止され車両保険の免責事由として残されたことが認められるけれども、このような事故後の約款の変更により本件事故に適用される約款の解釈を変更しなければならないものとも解されない。
然して、前記認定のように事故発生時、日中の労働による疲労、自動車内の暖房による温度の上昇が控訴人の居眠りを誘う一因であったことは認められるけれども、控訴人の巨摩荘における飲酒量、飲酒時間、飲食後の時間の経過、事故発生後警察における取調時の酩酊度等を綜合すると、控訴人は事故発生時正常な自動車運転に影響を及ぼす程度のアルコールを体内に保有し、そのために正常な運転のできないおそれのある状態で自動車を運転し、本件事故発生に至ったものといわざるを得ない。
なお、控訴人は控訴人が道交法第一一七条の二第一号の罪によって起訴されていないから免責条項は適用されないと主張するが、本件保険約款の解釈と道交法の罪で起訴され有罪判決を受けたかどうかとは必然的な関係がないばかりか、当審における証人大熊康治の証言によってもこの点に関する控訴人の主張は採用しがたい。
従って、本件事故については被控訴人主張の保険約款による免責の抗弁は理由がある。
(石田哲 小林定 野田)