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東京高等裁判所 昭和48年(ネ)400号 判決 1974年9月10日

昭和四八年(ネ)第四〇〇号事件控訴人

同年(ネ)第四〇三号事件被控訴人

第一審原告 蓬田鷹雄

右訴訟代理人弁護士 綿引光義

昭和四八年(ネ)第四〇〇号事件被控訴人

同年(ネ)第四〇三号事件控訴人

第一審被告 ユアサフナショク株式会社

右代表者代表取締役 山野幸之助

右訴訟代理人弁護士 岡本喜一

山中洋典

高見沢賢二

主文

1  第一審被告の控訴を棄却する。

2  第一審原告の控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。

第一審被告は第一審原告に対し三七四万七、二〇〇円及びこれに対する昭和四五年九月五日から支払ずみに至るまで年六分の割合による金員を支払え。

第一審原告のその余の請求を棄却する。

3  訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。

4  この判決第二、三項は仮に執行することができる。

事実

第一審原告は、「原判決中第一審原告敗訴部分を取消す。第一審被告は第一審原告に対し、さらに三一六万一、四〇〇円及びこれに対する昭和四五年九月五日から支払ずみに至るまで年六分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも第一審被告の負担とする。」との判決並びに第一審被告の控訴につき、控訴棄却の判決を求め、第一審被告は「原判決中第一審被告敗訴部分を取消す。第一審原告の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも第一審原告の負担とする。」との判決及び第一審原告の控訴につき、控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張、証拠の提出、援用及び認否は次に附加し、訂正するほかは原判決事実摘示と同じであるから、これを引用する。

一  第一審被告訴訟代理人は次のとおり述べた。

1  第一審被告が、第一審原告の主張する土地売買のうち、第二回分すなわち船橋市夏見町一丁目一〇五番一号田三八三平方米(原判決請求原因二(二)記載の土地)を第一審被告が訴外鳥光磯太郎から買受けた(以下第二回目の売買という)日時につき昭和四五年七月二五日である旨の第一審原告主張を認めたのは真実に反し、かつ錯誤に基づくから、右自白を撤回し、買受日時を同年四月二三日と訂正主張する。

2  第一審被告と第一審原告との間に合意された仲介手数料についての特約の詳細は次のとおりである。

第一審被告は第一審原告の仲介により昭和四五年四月四日鳥光磯太郎から船橋市夏見町一丁目一三〇番二田二四七平方米外三筆合計二四七〇平方米(原判決請求原因二(一)記載の土地)を買受けたのであるが(以下第一回目の売買という)同年三月八日仲介を依頼するにあたり、あらかじめ売主の提示した価格どおりで第一審被告が買受ける関係上、仲介手数料については応分の、すなわち第一審被告が任意決定する額の謝礼は支払うが正規の手数料は支払わない旨申出で、第一審原告の承諾を得たものである。右特約に基づき第一審被告は一〇〇万円を相当額の手数料として同年五月一二日第一審原告に支払った。

次に同年四月二三日成立した第二回目の売買は、第一審被告と売主である鳥光との直接の話合いによって締結され、第一審原告の仲介によるものではない。第一審原告の仲介によって第二回目の売買が成立したことを認める旨の自白は真実に反しかつ錯誤に基づくから撤回し、右の事実を否認する。

仮に第二回目の売買も第一審原告の仲介によって成立したと認められるとしても、右売買契約締結当時仲介手数料につき第一回目の売買の場合と同様の特約が成立し、右特約に基づき第二回目の売買に対する仲介料をも含めた趣旨において第一審被告は一〇〇万円を相当額と決定し前述一〇〇万円の支払をしたのであるから、それ以上の支払義務は存しない。

二  第一審原告訴訟代理人は右第一審被告の主張に対し次のとおり述べた。

1  第一審被告のした自白の撤回には異議がある。

2  第一審被告の主張する仲介料についての特約の成立は否認する。

三  証拠≪省略≫

理由

一  第一審原告は不動産の仲介売買等を営業とする商人であり、第一審被告は従前株式会社湯浅商店と称し、その後現商号に変更したものであるところ、昭和四五年四月四日第一審被告は第一審原告の仲介により訴外鳥光磯太郎から原判決事実請求原因二(一)記載の田四筆を代金一億三、四四六万円にて買受けたこと(第一回目の売買)は当事者間に争いがない。

二  右土地売買の仲介に際し、特段の報酬契約が存しないのであれば、第一審原告は第一審被告に対し相当額の報酬を請求しうべきところ、第一審被告は昭和四五年三月八日第一審原告に対し仲介を依頼するにあたり、あらかじめ正規の額による手数料ではなく、第一審被告が任意決定する額の謝礼を支払う旨の特約が成立したと主張するので、判断するのに、第一審被告の主張にそう≪証拠省略≫は、≪証拠省略≫と対比し、その表現において具体性を欠き、たやすく採用し難く、他にこれを認めるべき証拠は存しない。

昭和四五年五月一二日第一審被告が第一審原告に対し土地売買の仲介手数料として一〇〇万円を支払ったことは当事者間に争いがなく、≪証拠省略≫によれば、第一審原告はその前日の同月一一日第一回目の売買における中間金の授受がなされたので第一審被告に対し手数料の支払を請求したところ、第一審被告から手数料として一〇〇万円を支払うとの返答があったので、これに応じ第一審被告方に赴き右金員を受取ったのであり、右手数料領収の際、夏見町一丁目一三三の一、一三二の一、一三一の〇、一三〇の二の土地の仲介手数料として右金員を領収する旨記載した領収証を手交したことが認められるが、右の事実も前記第一審被告主張の特約の存在を認めしめるものではないというべきである。

三  次に第二回目の売買について、それが第一審原告の仲介によって成立したとの点及びその契約成立の日時が昭和四五年七月二五日であったとの点につき、第一審被告は一旦なした自白の撤回を主張するので検討を加えると、原審及び当審における第一審被告代表者の供述には、第二回目の売買は昭和四五年四月二三日買主たる第一審被告代表者と売主たる鳥光磯太郎の間で直接締結されたもので第一審原告の仲介に負うものではないかのようにも思われる部分があるけれども、≪証拠省略≫によれば、第二回目の売買についても、第一審原告が第一審被告の依頼を受けて仲介をした結果売買成立に至ったこと、右売買は同年四月二三日第一審被告代表者と鳥光との間において大筋の点において合意が成立したが確定的には同年七月二五日契約書を取交わすことによって締結されるに至ったことが認められる。従って第一審被告のなした自白の撤回はさきの自白が真実に反する旨の証明を欠くこととなりその効果を認めることはできない。

よって第二回目の売買が昭和四五年七月二五日第一審原告の仲介により鳥光と第一審被告との間で代金二、三七八万円をもって成立したことは、当事者間に争いないことに帰する。

第一審被告は第二回目の売買の仲介手数料の額についても、第一回目の場合と同様の特約が成立し、また第二回目の売買の仲介手数料は第一回目の売買の仲介手数料と合わせて支払ったと主張するが、これを認めるべき証拠は全く存しない。

よって第二回目の売買についても、第一審被告は第一審原告に対し相当額の仲介手数料を支払うべきであると認められる。

四  そこで第一審被告が第一審原告に対し支払うべき仲介手数料の額について判断する。

宅地建物取引業法四六条(本件取引当時の同法一七条)によれば宅地建物取引業者が宅地等の売買等の媒介に関して受けることのできる報酬の額は建設大臣の定めるところによるとされているが右所定額は最高限を示すものであること明らかである。

従って第一審原告が受取ることをうべき報酬額も右最高限以下において、その媒介した土地売買の交渉の難易、成立に至る経過、売買代金総額、その他諸般の事情等を斟酌して定めるべく本件にあらわれた事実関係などから見て、右報酬額は売買代金合計額の三パーセントとするのが相当である。

前記認定によれば、本件第一、二回売買の代金総額は一億五、八二四万円であるから、その三パーセントである四七四万七、二〇〇円が相当報酬額であるところ、第一審原告がそのうち一〇〇万円の支払をすでに受けていることはその自認するところであるから、これを差引くときは残額は三七四万七、二〇〇円となる。

よって本件請求中三七四万七、二〇〇円及びこれに対する催告期間経過後たること当事者間に争いのない昭和四五年九月五日から右支払ずみまで商法所定年六分の割合による遅延損害金の支払を求める部分は正当として認容すべく、その余は理由なしとして棄却すべきものであり、第一審原告の控訴に基づき右判断と一部見解を異にする原判決は右のとおりこれを変更することとし、第一審被告の控訴は理由がないから棄却すべく、訴訟費用の負担につき民訴法九六条八九条九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 吉岡進 裁判官 野田愛子 兼子徹夫)

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