東京高等裁判所 昭和48年(ネ)59号 判決
自転車競技法第一二条の六の規定が設けられたいきさつについては、同法が昭和三二年法律第一六八号により改正された結果、従来の自転車振興連合会の後身として日自振が新たに発足することになり、その際右一二条の六の規定が新設され、「民法第四四条、第五〇条及び第五四条の規定は、日本自転車振興会に準用する」と規定されたものであることは、控訴人のいうとおりである。
ところで国家賠償法第五条にいう「民法以外の他の法律に別段の定があるとき」とは、国または公共団体の損害賠償責任について、民法の規定を適用するのでは、不適当な場合があるので、民法以外の他の法律で別段の定をしているものをいうのである。現行法上の例としては、無過失責任を認めたもの(消防法第六条三項、文化財保護法第四一条、第五二条等)や、責任の範囲または賠償額を軽減したり定型化したりしているもの(郵便法第六八条ないし第七五条、鉄道営業法第一一条の二、第一二条、第一三条等)等がある。国家賠償法第五条が予定しているのは、右のように民法以外の法律によって民法ないし国家賠償法に対し、特別の定をしている場合である。
ところが、自転車競技法第一二条の六は単に民法第四四条を準用しているにすぎず、民法に対し何ら特別の定をしているわけではないから、このような規定が国家賠償法第五条にいう「別段の定」に当ないことは明らかである。右規定はむしろ、法人に関する一般的な規定である民法第四四条、第五〇条等を、日自振についても準用することを明らかにするためのものと解すべきである。
(岩野 中島 桜井)