東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)29号 判決
事実及び理由
一、引用例の技術内容の認定について
成立に争いのない甲第三号証によると、引用例の明細書には「そのようなテフロンは、ボルトの如き在来の固定手段によつて固定することができる。」旨の記載があるので、合成樹脂のシートはボルト止めで固定されるような所謂「板」としての性質をもつものをも含むものと認められる。
また切刃と合成樹脂部分との接触面の延長面と切刃の頂面の内方向へ向つての延長面とか九〇度以下で交つている点で、また合成樹脂部分が基底部分と密着している点で本件考案と引用例とが共通していることは争いのないところであり、また合成樹脂部分がともに合成樹脂板としてとらえられる点も前記認定のとおりである。
そして甲第三号証によると、その図示された構造上またプラウとしての性質上、引用例の合成樹脂板は切刃と密着していることが明かである。そうしてみると引用例においても合成樹脂板と切刃とは対応した同一傾斜面で密着結合されているものといえるし、成立に争いのない甲第二号証(本件登録実用新案公報)を検討してみても本件考案における傾斜結合面とさしたる違いはない。
したがつて引用例の技術内容の把握・本件考案の対比について、審決には原告らの主張するような認定の誤りはない。
二、嵌合手段の転用の困難性について
一般的な固着手段として嵌合が金属・木材・合成樹脂のいずれの材質からなるものについても共通の慣用手段であることは争いのないところであり、原告らが転用困難の根拠として主張する圧力作用・摩耗などの問題は、嵌合手段が適用される機械・器具・道具一般においても同様に考慮されるべき事柄で、こと新しいものとは考えられない。そのほか、嵌合手段として農業用作業機器であるがために生ずる特殊性、またそれによる新たな作用効果も特に見当らない。したがつてこの点に関する審決の判断にも誤りはない。
三、結論
そうすると、本件審決には原告らの主張するような認定の誤りはないから、原告らの本訴請求は失当として棄却する。
〔編註〕本件における登録実用新案の要旨は左のとおりである。
土との接触面の大部分を合成樹脂板で構成し別に基板の周縁に切刃を形成しこれを上記合成樹脂板に嵌合するようにした犁先金または培土器の刃先であつて、合成樹脂板と切刃の結合部面を切刃の頂面の内方に向つての延長面と結合部面との交叉角度を九〇度より小なる角度θとなるような傾斜結合面を持たせて嵌合一体とした農用作業器の刃先の構造