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東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)37号 判決

一 前掲請求の原因のうち、本願考案につき、出願から審決の成立にいたる特許庁における手続、考案の要旨及び審決の理由に関する事実は、当事者間に争いがない。

二 そこで、右審決に原告主張の取消事由があるか否かについて考察する。

先願考案の要旨が審決認定のような内容であること、本願考案と先願考案との間に審決認定の一致点及び相違点があること、また、両考案の構成が、駆動ナイフ(本願考案においては上下動ナイフ、先願考案においては昇降ナイフと呼ばれる。)と固定ナイフとの位置関係について原告主張のように相違することは当事者に争いがなく、右事実に成立に争いのない甲第一号証の一、二(本願考案の明細書)及び第四号証(先願考案の公報)を対照して考えると、先願考案のジヤカード機においては、両頭竪針の二針を等長とし、かつ、これが係合する昇降ナイフと固定ナイフとがジヤカード機の閉口時に等高部位で八字形に相対する関係位置にあることを構成要件とするため、昇降ナイフの間隔を狭くすると、ジヤカード機の開口時に一方の針が昇降ナイフに係合して上昇するにつれ、これに係合しない他方の針の先端にあるナイフ係合部が隣接する昇降ナイフに接触するおそれがあること、これに対し、本願考案のジヤカード機においては、両頭竪針を長短二条としたうえ、長針が係合する上下動ナイフ(箱)と短針が係合する固定ナイフとがジヤカード機の閉口時にも上下に隔離された関係位置にあるようにする構成であるため、上下動ナイフ相互の間隔を狭くしても、ジヤカードの開口時に長針が上下動ナイフに係合して上昇するに際し、短針が隣接する上下動ナイフに接触するという先願考案におけるような支障を生ずるおそれがなく、引いては、ジヤカード機自体を比較的小型化しうるという効果が生じることが認められる。被告は本願考案でも竪針が上昇する場合にその短針のナイフ係合部が隣接する別の竪針の長針に接触するおそれがある旨を主張するが、前出甲第一号証の一、二によれば、本願考案において竪針同士の展開による接触は展開阻止用ロツト(別紙第一図面の3)を固定ナイフ相互の間に適宜配置することによつて防止可能であることが認められるので、右主張は採用することができない。

ところで、審決は、二重杼口式ジヤカード機における複竪針として長短二条に形成したものが周知であつたことを根拠に、本願考案の構成が先願考案の単なる設計変更に過ぎないと判断し、右のような形状の複竪針が周知であつたことは原告も認めて争わないところである。しかし、周知事項として複竪針を長短二条に形成する目的が上下動ナイフによつて引上げられる複竪針の上昇距離を二通りに規制することにあることは当事者間に争いがないところ、前出甲第四号証によれば、先願考案のジヤカード機においては、両頭竪針の位置を三通りに規制して三段開口を行なわせるため、横針と三通りに関連させる別個の手段を具備していることが認められるから、先願考案のジヤカード機を実施するに際して、その両頭竪針の代りに周知事項たる長短二条の複竪針を用いるのは、無用の手段を加えるものであつて、他に何らかの目的がない限り技術常識に反するといわざるをえない。したがつて、本願考案において両頭竪針を長短二条に形成する構成をもつて、先願考案の単なる設計変更とみるのは当らない。

以上の次第で、本願考案と先願考案とは、その構成を異にし、これをもつて同一考案と解すべき理由はないから、右審決が、先願考案との対比上、本願考案の新規性を否定した判断は誤りであつて、違法であるというべきである。

三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を正当として認容する。

〔編註その一〕 本願考案の要旨は左のとおりである。

二つ折した竪針をそれぞれ長短二条に形成させるとともに、その先端にナイフ係合部を屈折形成し、一方の長針を上下に駆動するナイフ箱の各ナイフに係合させるようにし、他方の短針は機枠の上縁に固定したナイフに係合するようにして多数並列し、この各竪針群を上下二段に多数並列した横針に、長針群は上段横針に、短針群は下段横針にそれぞれ支持させるとともに、上段横針群は各先端は一方のシリンダーに対向し、下段横針群はそのシリンダーの反対側に装置したシリンダーに対向させたことを特徴とするジヤカード機(別紙第一図面参照)。

〔編註その二〕 本件に関する図面は左のとおりである。

別紙第一図面

<省略>

別紙第二図面

<省略>

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