東京高等裁判所 昭和48年(行ケ)68号 判決
原告主張の請求原因事実は、当事者間に争がなく、この事実によれば原告の本訴請求は正当であるから認容する。
一、特許庁における手続の経緯
原告は、昭和四〇年一月一九日に出願した昭和四〇年特許出願第二六八四号の追加の特許出願として昭和四〇年二月二六日「スイツチング回路を有する電気露出計」の発明につき特許出願をしたところ、昭和四四年一〇月二三日拒絶査定があつたので、昭和四五年一月二二日審判の請求をした。ところが、昭和四七年一二月二六日付を以つて「本件審判の請求は成り立たない」旨の本件審決がなされ、その審決謄本は昭和四八年五月二一日原告に送達された。
二、本願発明の特許請求の範囲
(一)光電変換素子を含むブリツジの一対の出力端子のうち一方の電位を規準とし、他方の電位がそれより高いか低いかを原信号とし、他方が一方より高いとき導通するスイツチング装置と、他方が一方より低いとき導通するスイツチング袋置とより成り、これらのスイツチング装置は上記ブリツジの一対の出力端子の電位が略等しい範囲では共に導通或は遮断となつており、上記スイツチング装置によつて、表示装置の二以上の表示素子を制御するようにしたことを特徴とするスイツチング回路を有する電気露出計
(ニ)光電変換素子と可変抵抗とを含むブリツジと、二個のトランジスタの如き増幅素子を含み上記ブリツジの光電変換素子と可変抵抗の接続点に他方の増幅素子の入力端か、また対向する接続点に他方の増幅素子の入力端が接続された差動増幅器と、その差動増幅器の各出力によつてそれぞれ制御される二個の直流増幅器と、これらの直流増幅器の出力回路に接続され、上記直流増幅器の導通、不導通により制御される二個の表示素子とから成ることを特徴とする電気露出計
三 審決の理由の要旨
本願発明の要旨は、その特許請求の範囲の第一項および第二項に記載されたとおりのものと認める。
特公昭三六ー一〇三九八号公報には、硫化カドミニウム光電体を用いた露出計であつて、ネオン管二個を有してその一方は回路に通電することにより点灯し、他の一方は硫化カドミニウム上に照射される光に応じて可変抵抗を動かし、点灯から非点灯への転位点を検出するようにしたものが記載されており、また、実公昭三一ー八〇三六号公報には、直流電流の方向を指示するために、整流素子と豆電球を直列につないだものを二組、反対方向に並列につないで、電流の極性に応じてどちらかの豆電球が点灯するようにしたものが記載されている。
本願各項の発明と第一の引用例とを比較すると,両者は、硫化カドミニウムに流れる電流を利用し、露光量に応じて表示素子が点灯から非点灯(またはその逆)に変化する点で同じであるが、本願発明のものは、ブリツジ回路を構成すること、二つの電圧を比較して表示素子を作動させるスイツチング装置を二組有すること、および第二項の発明においては更に直流増幅器を有する点で引例のものと相違する。
しかしながら、抵抗値などの変化を測定するのにブリツジ回路を用いてその不平衡電流を測定することは慣用されているところであり、その不平衡電流は必ず正、〇、負となるものであるから、その検知のために電流計の代りに正、〇、負を二組のスイツチング装置と表示素子で判定することのできる第二引例のものを組込むことは、当該技術部門の者が必要に応じて上記二引例のものから容易に発明できたものと認められる。
また、第二項の発明に記載の直流増幅器を附する点も半導体回路で慣用されるところであるので同断である。
したがつて、本願の発明は、特許法第二九条第二項の規定により特許できない。
四、審決取消の事由
審決は特公昭三六ー一〇三九八号公報(以下「第一引用例」という。)および実公昭三一ー八〇三六号公報(以下「第二引用例」という。)を引用して本願発明はこれらのものから安易に推考することができたものと認定した。しかしながら、第一引用例は審判における拒絶理由通知書に全然引用されていないのであつて、拒絶理由通知書に記載されたのは特公昭三六ー一〇三九九号および第二引用例である。したがつて、原告は第一引用例について意見書を提出する機会を与えられなかつたものであり、本件審決は特許法五〇条一五九条二項に違反する違法のものであるから、その取消を求める。
被告の答弁
原告主張の請求原因事実はすべて認める。