大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(う)1189号 判決

被告人 富国運輸株式会社 外一名

〔抄 録〕

右によれば、被告人らの所為は、形式的には火薬類取締法六〇条二号、二〇条一項に該当するようにみえるけれども、被告人が本件砲弾を運搬するにいたったいきさつ、当時の外部的状況、警察官による運搬不阻止の事情、被告人のその後の行動等を総合して検討し、本件を実質的に考察するときは、被告人らの所為は刑罰をもってのぞまなければならないほどの違法性を具備しないというべきである。すなわち、本件は、当日浦郷弾薬庫への運搬をしないことを米軍に連絡しているのに、米軍の内部連絡の不徹底によって、現場の兵隊が運搬を命じたことに起因し、ゲート内という特殊な状況下で英語を喋れない被告人が帰路の運搬証明書を携帯していないことを米兵に了解させることは至難の業といってよく、米軍基地内のこととて電話その他によって関係方面と連絡する方法も具体的には困難であったと認められること、このような事態に直面した被告人に、より冷静に対処することを期待するのは酷に失するといわなければならない。そして、さきにも触れたとおり、永山警察官において被告人の車が運搬証明書を携帯しないで通行しているのをゲートのすぐ近くで認めながら、これを阻止しないばかりか、適切な指示も与ええず、通行を黙認した結果となったことは、当時デモに対する警戒が主たる任務であったとはいえ、警察官の措置としては、はなはだ妥当を欠くものであったといわなければならない。このように米軍や警察官に重大な落度があるのに、ひとり被告人に対して刑罰を科することは、著るしく正義に反するというべきである。右のような事情のほか、当時弾薬輸送に反対するデモ隊があって、一旦ゲートを出れば、ひき返したり、停止したりすることは容易でなかったこと、運搬証明書の交付は三日後に予定されていてそれだけ実質的な違法性に乏しいこと、被告人は砲弾を運搬後後続車を停めるべく努力していること等の事情を併せ考えると、被告人らの本件所為が火薬類取締法の前記法条に違反するとして処罰さるべき実体を有する違法な行為であるとは認めることができない。これとは異なり、被告人らの本件所為が右法条に違反するとした原判決はいかにも形式論であって、結局、事実を誤認したことになるというべきである。

(寺尾 丸山 田尾)

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