東京高等裁判所 昭和49年(う)1300号 判決
被告 新光産業株式会社 外一名
〔抄 録〕
風俗営業等取締法四条の四第二項に基づき昭和四一年一二月二〇日神奈川県条例第六二号によって改正された神奈川県条例第四号風俗営業等取締法施行条例三一条(昭和四七年条例第七五号による改正前のもの)は所論のように神奈川県全域を個室付浴場営業の禁止区域と定めたものではないから所論は前提を欠くが、風俗営業等取締法四条の四第二項が「前項に定めるもののほか、都道府県は、善良の風俗を害する行為を防止するため必要があるときは、条例により、地域を定めて、個室付浴場業を営むことを禁止することができる。」と規定している趣旨は、個室付浴場業の営業形態の特殊性にかんがみ、善良の風俗を害する行為が行われるおそれのあるところから、営業により当該地域の清浄性が害され、あるいは青少年の健全な育成上弊害がある等の理由により地域における善良の風俗を保持する必要性がある場合において、その地域の特殊性を良く判断しうる都道府県に対し、条例において営業の禁止区域を指定する権限を委任したものであり、右の趣旨に照らせば、同条項は第一項の委任とは異なり、大都市の繁華街のように従前から風俗営業等の蝟集し、個室付浴場が設置されることによりとくに当該地域の清浄性等を考慮する必要のない区域を除いてある程度広範囲の区域を禁止区域と指定することを認めたものと解されるから、右神奈川県条例が相模原市全域を個室付浴場業の禁止区域と指定したことは右風俗営業等取締法四条の四第二項の委任の範囲を越える違法のものとは認められないし、また、憲法二二条一項は国民に営業活動の自由を保障するものではあるが、国が国民生活の平穏ないし善良の風俗保持の一手段として営業活動に必要かつ合理的規制措置を講ずることは右条項の公共の福祉による制約として憲法の禁ずるところではなく、公衆浴場法二条一項が公衆浴場業を都道府県知事の許可にかからしめているのは公衆浴場が保健衛生及び風紀面にもたらす影響の少くないことにかんがみ営業活動に一定の秩序を保たせるための必要な措置であり(同法二条二項後段の合憲性に関する最高裁大法廷昭和三〇年一月二六日判決、刑集九巻一号八九頁参照)、また風俗営業等取締法四条の四第二項の趣旨は前記のとおり、一定地域における善良の風俗保持の必要に出た合理的な制限であって、右条項に基づく条例の適用については同条第三項において、現に公衆浴場法二条一項の許可を受けて営業している個室付浴場業に対する適用除外を明確にし、第二項による営業活動の制限が将来におけるものであるとしていることにもかんがみると、右規定による制限は公共の福祉による制約の範囲内のものということができるから憲法二二条一項に違反しない。
(田原 吉沢 小泉)