東京高等裁判所 昭和49年(う)2256号 判決
被告人 柴田博愛
〔抄 録〕
所論は、また被告人の運転行為には危険は全くなかったと主張する。そして、被告人の司法警察員に対する供述調書及び司法警察員作成の実況見分調書によれば、被告人の飲酒運転発覚の端緒となったタクシーとの衝突事故は、交差点で右折してきたタクシーが通行区分帯を間違えて被告人の車線に入ってきたことによるもので、被告人に運転上の不注意は認められず、また前記の飲酒検査の結果のほかには、被告人の運転行為に正常な運転でなかったことを直接認めるに足りる外部的行動は認められなかったのである。しかし、酒酔い運転にいう酒に酔った状態とは、酩酊の度合が車両を運転するのに必要な注意力や判断力を失なわせるおそれがあると一般に評価される程度に達していることをいい、現実に運転行為において具体的な危険が発生することまでも必要とするものではないと解せられる。そして、本件においては、前記認定の被告人の身体のアルコール保有量や外部的所見のほか平素の酒量等にかんがみると、被告人が酒に酔って正常な運転ができないおそれのある状態にあったと認めざるを得ない。それで、論旨は理由がない。
(浦辺 環 田尾)