大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(う)2395号 判決

被告人 アレハンドロ・フェレーラ

〔抄 録〕

右判示の寺嶋が宿泊代等の請求を一時断念したという行為は、所論のとおり事実行為であるといわなければならない<中略>し、また右の宿泊代等の請求を一時断念する行為は、被告人に対してはその支払の督促をしないという不作為による行為であるが、刑法二四六条二項の詐欺罪の要件としての財産的処分行為は必ずしも法律行為に限られるものではなく、事実上の財産的損失を生ぜしめるような事実行為でも足り、また作為に限らず不作為によっても成立するものと解すべきであって、所論指摘の判例も右の解釈を否定するものではない。そして、原審記録及び当審における事実取調の結果によると、被告人は、本件犯行前の昭和四九年一月二四日まで有効の旅券によって一時的に日本に上陸したアルゼンチン共和国国籍の外国人であって、アルゼンチン特命大使と称しているが、アルゼンチン共和国大使館との関係もなく、前記ホテル「石亭」に宿泊したのは全く振りの客としてであって、当時所持金は一万余円で、格別の所持品もなかったことから考え、前記寺嶋としても被告人に欺罔されなかったとすれば少くとも右の所持金の範囲でも直ちに支払を要求したであろうと認められるので、前記の寺嶋が宿泊代等の請求を断念した行為は事実上財産的損失を生ずるような不作為による財産的処分行為であると認めるのが相当であり、これによって被告人はその宿泊代等の支払を免がれて財産上不法の利益を得たものと認めることができる。したがって原判示第二の事実に関しても原判決に所論のような事実の誤認及び法令の解釈適用の誤りはないものというべきである。

(龍岡 片岡 福嶋)

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