東京高等裁判所 昭和49年(う)2482号 判決
被告人 香田祐一
〔抄 録〕
しかし、原判決挙示の関係諸証拠を総合すると、原判示第一及び第二の各事実はすべて十分に肯認することができる。なるほど右各証拠によると、原判示第一の現金一三〇万円及び同判示第二の現金一一〇万円はいずれも各判示の日に消費貸借の形式をもって被告人が野宮から交付を受けたものであるが、その際に被告人が野宮に対し申し向けた各判示の事実はいずれも虚偽であって、原判決が認定した被告人に右金員の返済の意思及びその能力がなかったという点も肯認できないものではなく、野宮は、右各事実が真実であると誤信し、錯誤に陥ったため前記各金員を被告人に貸与することになったもので、右のような事態を正当に認識していたならば右各金員を被告人に交付しなかったものであることが明らかである。そこで、消費貸借契約が詐欺による場合でも、民事上は取り消されない限り有効なものとして、右金員の回収を図るため右契約に基づき訴求することは可能であり、とくに所論指摘の判決は民訴法一四〇条三項に基づくいわゆる欠席判決であって、右判決があるからといって、前記のような事実関係が認められる限り、契約取消の有無にかかわらず、被告人は、野宮を欺罔して、借受金名下に前記各金員を騙取したものというべきで、これが詐欺罪に当ることを否定することはできない。
(龍岡 片岡 福嶋)