東京高等裁判所 昭和49年(う)3005号 判決
被告人 玉木明一
〔抄 録〕
もっとも、本件において、甲事件について被告人を逮捕、勾留中に乙事件についても被告人の取調その他の捜査がなされたことは前示のとおりであるが、記録によれば、乙事件の事実は、東京多摩青果運送株式会社自動車整備工場兼東京多摩青果株式会社倉庫において、右両会社所有の自動車工具類を窃取したというものであって、甲事件の事実のいわゆる同種余罪であり、両者は、その犯行日時の点において隔たりがあるとはいえ、実体的に密接な関係があること、甲事件の事実について取調中、被告人がみずから進んで乙事件の事実について供述したものであること、前示のとおり、乙事件の事実は、甲事件の事実に比し、回数の点は格別、その被害価格の点からしても、より重大な事案とはいえないこと、被告人の逮捕、勾留中、現実に甲事件についても取調が行なわれ、かつ甲事件が起訴されたこと、が認められるのであり、これらを総合すれば、甲事件について被告人を逮捕、勾留中に行なわれた乙事件についての被告人の取調、証拠資料の収集が違法であったとは考えられず、また、その逮捕、勾留中に得られた乙事件の事実に関する被告人の自白や証拠資料が、そのために証拠能力がなく、あるいは任意性を欠くものということはできない。それゆえ、原判決が乙事件の事実について原判示被告人の捜査官に対する各供述調書および被害届その他の書証を証拠として採用し、これらを判断の資料としたこと自体にはなんら違法はないと解すべきである。
(上野 綿引 千葉)