東京高等裁判所 昭和49年(ネ)2553号 判決
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【説明】
訴外並木は、同人所有の土地を、①、②、③、④と各部分に等分し、各々、①部分を吉野に、②部分を榎本に、③部分を比企に、④部分を猪俣に賃貸していた。(分筆は、なされていなかつた)
【判旨】
被控訴人は、昭和二六年八月一〇日榎本新太郎から②部分の土地上にある建物を買受けた際、並木の代理人であつた加納直との間で、右②部分の土地について、新規賃貸借の権利金もしくは賃借譲受承認料に相当する趣旨の金員を支払うことを約定したが、昭和二七年四月頃加納直から右土地を買取つてほしい旨の申し入れがあつたので、底地代金に相応する金員を追加して支払うことで右②部分の土地を買受けることにしたこと、次いで、被控訴人は、同年一一月ごろ同じく加納直との間で、③部分の土地を買受ける契約をなしたこと、右の二回の売買契約における各土地代金額が結局いくらと定められたかについては、被控訴人の供述は首尾一貫しないが、少くとも、②部分の土地分については昭和二七年四月一〇日に金二万四、六二〇円、同年同月一四日に金五、四〇〇円をそれぞれ支払い、③部分の土地分については、同年一一月九日に「宅地二五坪の売買契約の手付金」として金二万二、五〇〇円、同年一二月一四日ころに金一万五、〇〇〇円をそれぞれ支払つたことは明確であり、最終的には、昭和二八年一月五日ころまでに右売買代金全額を分割して加納直に完済したこと、右売買契約後被控訴人が右②及び③部分の土地につき旧並木所有地から分筆して被控訴人名義に所有権移転登記手続をすることを加納直に委任したところ、同人は、昭和二七年一二月二六日、右②及び③部分の土地から当時より既に通路となつていた本件土地に相当する部分を除いた北西部分四〇坪だけについて分筆したうえで被控訴人名義に所有権移転登記手続を経由したこと、これに対し被控訴人は、昭和二八年七月八日加納直に対し自己の買受けた土地の範囲が五〇坪でなく四〇坪であると一方的に変更されて所有権移転登記手続がなされていることにつき売買契約違反であると抗議する趣旨の内容証明郵便を送付したことが認められる。
右認定事実によれば、被控訴人は、並木の代理人である加納直から、②及び③部分に相応する土地をおよそ五〇坪として買受けたものであると認めるのが相当であり、従つて、②及び③の土地の一部である本件土地も被控訴人が買受けたものというべきである。<中略>
四本件土地を包む東京都渋谷区本町一丁目一四番地二八宅地149.91平方米につき、昭和二七年一二月二六日受付をもつて控訴人名義に所有権移転登記が経由されていることは、当事者間に争いがない。
<証拠>によれば、右宅地は、控訴人の父である加納直が昭和二七年一二月二五日控訴人のためその前所有者並木より買受けたものであること、加納直が昭和四〇年死亡し、控訴人がその地位を相続をしたことが認められる。
五以上によれば、亡加納直は、本件土地の前所有者並木良成の代理人として、本件土地を被控訴人に売却し、同人よりその所有権移転登記手続を委任されながらこれを怠り、一方で右売買契約成立後に本件土地を自らあるいは実子である控訴人の代理人として並木から買受けているものであるから、不動産登記法五条の法意に鑑み、控訴人は、被控訴人に対し本件土地の所有権取得登記の欠缺を主張することができないものというべきである。
従つて、被控訴人は、本件土地の所有権を有するものというべきであり、その真正な所有権登記名義の回復のため、控訴人に対し本件土地の所有権移転登記手続請求権を有するものというべきである。
(外山四郎 海老塚和衛 鬼頭季郎)