東京高等裁判所 昭和49年(ネ)2619号・昭49年(ネ)944号 判決
以上認定の事実関係から考えると、法弘としては、当時本件事故現場付近道路が右ガレ場からの落石のため危険な状態にあること、とくに事故当時その危険が一層大であることを十分に認識していたはずであり、そのうえさらに少くとも本件事故現場の手前約五―六〇メートルの地点に達したころには、前方ガレ場や路上の見とおしも良好であって、同ガレ場の状況や前方道路上における右小石などの流出状況や一時停車したバスの状況などを十分に認識しえたはずである。したがって法弘はこのような状況下において右事故現場を通過するに際しては、たとえその道路が公道であるとはいえ、右ガレ場からの落石の危険に十分注意を払い前記バスの一時停車にならってみづからも一時停車し、あるいは進路をさらに右側(道路東側)に寄せて減速徐行するなどの周到な措置を講じるべきであったと思われるのであって、また、法弘において、右のような周到な措置を講じてさえいたならば、本件におけるような落石による事故をさけられたか、あるいはまた、さけられなかったとしても、本件におけるように車両が転覆までして運転者が死亡するにいたったという重大な結果までは生じなかったと思われるのに、法弘が前記に認定したように、右一時停車も徐行等の措置をとることもなく本件事故現場を前記速度で進行したのであるから、以上説示の周到な注意による措置を講ずることもなく漫然と右自動車の運転進行を続けたため本件のような重大な事故を発生させるにいたったものというのほかはなく、本件事故発生については、この点において、同人にいささかの落度があったとされてもやむをえないものと思われるのである。
(畔上 安倍 唐松)