大判例

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東京高等裁判所 昭和49年(ネ)817号 判決

一般に、老令による定年退職後の再雇用は、その時点での社会福祉政策の現状、退職後の経済的収入の確保など社会一般の老後の生活環境の考慮はもとより、当該企業への寄与程度、再雇用者の効率など諸般の事情を考察して、その要否が決定されるものであるが、現在では、五五歳が定年である場合なお当該企業で何らかの形で再雇用すべき必要性が大きいことは一般に知られたところである。この現状によると、使用者が労働者を再雇用するかどうかは、使用者の完全な自由意思に任されているものとはいえず、前記のように、会社が特に必要があると認めた場合に再雇用する旨就業規則に定めた場合であっても、その意思決定に制約を伴なうことはまたやむを得ない。特に会社に前記のような定年退職後は特段の欠格事由のない限り再雇用するとの労働慣行が確立している場合、それが労働慣行となる程の事例の集積により使用者が定年退職者を再雇用するとの同一の意思を表示したことは、その労働者に対してばかりでなく、将来定年に達する他の労働者に対しても、特段の欠格事由がないかぎり、再雇用する旨あらかじめ一般的に黙示の意思表示をしているものとみられ、それは単なる再雇用申込の誘引ではなく、再雇用の申込というべきものであるから当該労働者が定年退職後に再雇用の意思表示をすることにより、使用者の再雇用の申込に対する承諾があったことになり、それによって直ちに当該労働者と使用者との間に再雇用契約が成立するものと解するのが相当である。本件において、原審における被控訴人石川光男本人尋問の結果によると、被控訴人石川が定年後に大栄に対し再雇用の意思表示をしたことが認められ、前記(一)(2)認定の事実によると、被控訴人佐藤が黙示的に大栄に対し定年後に再雇用の意思表示したものとみられ、特段の欠格事由の存しないことは後記のとおりであるから、右説示の点から、同被控訴人らがそれぞれ五五歳に達した日の翌日、すなわち、被控訴人石川については昭和四二年一〇月三〇日に、被控訴人佐藤については昭和四一年五月三日に、大栄との間に、再雇用契約が成立したものということができる。もっとも大栄は同被控訴人らの就労を拒否したことは後記のとおりであるが、その拒否の許されないことまた後記のとおりであるから、これによってなんら右結論を左右すべきではない。そして、右再雇用関係は、控訴人が大栄の地位を承継した現在では、控訴人との間に存在するものというほかない。

(浅沼 加藤 高木)

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