東京高等裁判所 昭和49年(行ケ)101号 判決
(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告らは、本件審決が、引用商標から「エコー」の称呼も生ずるとしたことをもつて、類否の判断を誤つた違法のものである旨主張するが、この主張は理由がないものといわざるをえない。すなわち、前記当事者間に争いのない事実によれば、引用商標は、別紙記載のとおり、「クラレツタ エコー」の片仮名文字及び「CLARETTA ECHO」の欧文字を上下二段に横書してなるものであることを認めることができるから、その片仮名文字に相応し、「クラレツタエコー」の一連の称呼を生ずるものであることは見易いところであるが、引用商標を構成する文字の後半部分に当たる「ECHO」及び「エコー」の文字が、英語で「音」、「こだま」等の意味を有する単語であることは原告らの認めて争わないところであり、我が国における英語の普及の度合いからみて、「エコー」の語は英語の「ECHO」に由来する日本語であり、「音」、「こだま」の意味を有する名詞であることを一般世人において容易に理解するものと認めるのが相当であるから、引用商標からは「クラレツタエコー」という一連の称呼のみが生ずるものとする特段の事情の認むべき証拠のない本件においては、引用商標は、前記「クラレツタエコー」のほか、「エコー」の称呼を生ずるとみるを相当とする。
原告らは、引用商標は、全体として発音された場合を基準とすべきであるから、一連に「クラレツタエコー」の称呼のみを生ずる旨主張するが、この主張の採用し難いこと叙上説示したところから明らかである。原告らは、また、引用商標は、「クラレツタ」という名のイタリア系女性が山に向つて発した音声が、こだまとなつて返つてくるという美しいニユアンスを充分感取することができるから、引用商標は一連に「クラレツタエコー」の称呼のみを生ずる旨主張するが、「クラレツタ」がイタリア系女性の名であることは被告も認めて争わないところであるけれども、引用商標から直ちに右主張のような内容の観念を充分感取することができるとは断じ難いから、右主張は、すでにこの点において失当であり、もとより採用しうべき限りではない。更に、原告らは、別紙目録記載の既登録例を挙げ、これらの登録例が存在することからすれば、本件審決が引用商標から「エコー」の称呼も生ずるとしたのは誤りである旨主張するが、商標の登録適格性の有無及び類否の判断は各商標につき個別的に判断すべき性質のものであることはいうまでもないところであるから、原告ら主張の既登録例の存在することから直ちに引用商標から「エコー」の称呼を生ずるとしたことを誤りとすることはできない。
叙上のとおり、引用商標からは、「クラレツタエコー」のほか「エコー」の称呼を生ずるものとするを相当とし、本件登録商標が「エコー」の称呼を生ずるものであることは原告らの認めて争わないところであるから、本件登録商標と引用商標とは、いずれも前記「エコー」の称呼を生ずる点において、互いに類似するものというべく、本件審決に原告ら主張の誤りはない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法のあることを理由に本件審決の取消を求める原告らの本訴請求は、理由がないものというほかない。よつて、これを棄却する。