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東京高等裁判所 昭和49年(行タ)26号 決定 1974年11月25日

東京都中野区新井町一丁目五五番地

申立人

中野興業株式会社

右代表者代表取締役

大玉勝政

右申立人から、控訴人同申立人、被控訴人中野税務署長間の当庁昭和四八年(行コ)第二六号更正処分取消請求控訴事件につき、文書提出の申立てがあつたので、当裁判所は、次のとおり決定する。

主文

本件申立てを却下する。

理由

一、申立人(控訴人)は、「被控訴人に対し、本件第二事業年度(昭和四〇年二月一日から昭和四一年一月三一日まで)についての控訴人に対する法人税決議書並びに同決議書に編綴された確定申告書の提出を命ずる。」旨の裁判を求め、その申立ての理由は別紙記載のとおりである。

二、よつて判断するに、申立人が被控訴人から提出を求める右文書(以下、本件文書という。)のうち、法人税決議書(この文書の範囲は必ずしも明確ではないが)現に被控訴人のもとに保管されていることは、当審証人上島馨の証言によりこれを認めることができるが、同文書は民事訴訟法第三一二条第一項各号のいずれにも該当しないことが、本件記録に徴して明らかである(もつとも、同文書は、同条第三号後段にいわゆる「挙証者と文書の所持者との間の法律関係に付き作成されたもの」に該当するかのように見えるが、同文書は、被控訴人が本件更正処分をなすにあたり、内部的意思を確定するために作成されたものであることが明らかであつて、これによれば、この文書は、同条第三号後段に該当する文書として訴訟法上提出を強制されるべき文書でないといわなければならない。)。従つて、被控訴人は同文書につき提出義務をおわないというべきである。

次に、本件文書のうち、右掲記の確定申告書につき考えるに、右掲記の証言及び本件口頭弁論の全趣旨によれば、この文書も現に被控訴人のもとに保管されていることがうかがえる。ところで、申立人が同文書により立証しようとする事項は、控訴人が新井町団地の特定の入居者(その詳細は別紙三掲記)から受領した金員が借入金または敷金として受領したものであつて、その趣旨が右確定申告書に記載されていることに帰すると考えられるところ、本件口頭弁論の全趣旨によれば、右事実は、被控訴人において争わないものであることが明らかである。従つて、申立人が、かような事実を立証するため同文書の提出を求める必要がないというべきであるから、この部分の文書提出の申立ても理由がないといわざるを得ない。

三、そうすると、申立人の本件文書提出の申立は、すべてその理由がないから、これを却下すべきである。

よつて、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 白石健三 裁判官 小林哲郎 裁判官 間中彦次)

昭和四八年(行コ)第二六号

文書提出命令申立書

控訴人 中野興業株式会社

被控訴人 中野税務署長

右当事者間の法人税取消請求事件において、控訴人はその主張事実を立証するため左記文書の提出命令を発せられたく申立てます。

一、文書の表示および所持者

本件更に第二事業年度についての法人税決議書、並びに同決議書に連綴された確定申告書

右文書は被控訴人が所持する。

二、文書の趣旨

右法人税決議書は本件各更正原処分に際し、本件調査担当官上島馨によつて発議作成された更正処分の基本たるべき文書であつて、その記載によれば、控訴人が借入金または敷金と経理受領した金銭は、実質上の借入金または敷金とは認めがたく、「権利等譲渡収入」であることを理由として、更正することが何が故に正当であるかについて、被控訴人が認定した具体的更正の理由とその計算的基礎、並びに連綴した確定申告書並びに控訴人備付けの帳簿の記載と更正処分の内容との具体的関連性を示すべき文書である。

三、証すべき事実

1. 控訴人が新井町団地の特定入居者として左記の者……(二〇一号大玉・二〇三号前原・二〇四号三松・二〇五号西島・三〇二号市川・三〇四号小尾)……を都住宅公社に推せんした際、同人らと(控訴人を売主とし同人らを買主とする)当該入居公社分譲住宅、または庭付住宅の売買契約を締結し、その売買代金の一部(住宅または庭付住宅の売買差益金)を借入金及び敷金の名目で取得したものまたは原判決理由二・2・(ハ)に摘示された庭付住宅売渡代金の一部であると認定したものであつて、原判決理由二・2の本件各更正理由により益金と認定して本件更正処分をしたものではない事実。

2. 被控訴人は右庭付住宅の売買差益金を算出するに際し、控訴人備付けの元帳建物勘定(甲第一八号証の一)の庭園築造費金一、二九八、一四〇円についての記載を無視して、控訴人が、控訴人の費用により構築した庭園の取得原価を控除しなかつたばかりでなく、権利等譲渡収入なる極めて多義的にしてかつ抽象的な更正理由を付記することによつて、被処分者である控訴人をして本件各更正通知書を受領した当時、更正通知書の「記載自体」から庭付住宅の売買差益と認定したることは勿論、原判決理由二・2に摘示された「控訴人が特定入居者として推せんし、同人らをして公社の住宅を購入し、同住宅に入居することを得させたことの対価として受領したもの」という本件各更正理由の趣旨を了解せしめ得なかつた事実、並びに「権利等譲渡収入」と「庭付住宅を購入することを得せしめた対価または謝礼金」とは、その趣旨において同一ではなく文言上の差異は勿論、庭園構築費を控除すべきであるから更正すべき金額にも差額が生ずべき事実。

3. 本文書には、原判決理由二・2に摘示の本件各更正理由の趣旨が記載されていない事実により、右原判決第二・二・2に摘示された被控訴人主張の更正理由は、本件訴訟が提起されたる後に於て被控訴人の特別代理人等が恣意によりこれを主張したものであつて、本件更正原処分当時、被控訴人(含上島馨)に於いてその認識を有しなかつた更正の理由であるから、当然被処分者である控訴人も認識し得るはづのない、しかも更正期間経過后における許されざる更正理由の追完である事実。

四、本件文書は、被控訴人が本件訴訟に於て、本件各更正の理由主張の根拠とした文書であるから、被控訴人は民事訴訟法第三一二条第一項により本件文書を提出すべき義務がある。

昭和四九年 月 日

右控訴人 中野興業株式会社

代表取締役 大玉勝政

東京高等裁判所第三民事部 御中

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