大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(う)1606号 判決

被告人 貝塚正二

〔抄 録〕

以上認定の諸事実によってみれば、本件小切手は外観上開拓社からハウジングトラストに対する支払いのため交付されたかのように見えるけれども、当時開拓社とハウジングトラストとの間には決済すべき債権債務関係は存在しないのみならず、徳岡達爾はハウジングトラストの債権の弁済を受領する意思をもっていたわけではなく、単に被告人に命じられるままその手足となって本件小切手の交付を受けたに過ぎないことが明らかであるから、本件小切手は右小林から徳岡達爾が交付を受けたことによって被告人の占有に帰したものというべきであり、したがって、本件小切手がハウジングトラストの占有に帰したものであるとする所論は失当といわなければならない。しかし、もともと本件小切手は、被告人が自己の個人的遊興費等の支払いに充てるため、業務上保管にかかる開拓社の当座預金よりほしいままに現金一七五万円を払い出す手段として部下に作成させ、右徳岡を介して自己の手中に納め現金化したものであるから、被告人の右所為は右預金払い出しの段階において業務上横領罪を構成するものであり、その手段である本件小切手それ自体について業務上横領罪が成立することはないものというべきである。したがって、本件小切手自体について業務上横領罪の成立を認めた原判決は、事実を誤認した結果法令の適用を誤ったものであり、結局において論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。

(服部 藤井 山木)

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