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東京高等裁判所 昭和50年(う)225号 判決 1977年2月14日

被告人 大島清

主文

本件控訴を棄却する。

当審における訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

本件控訴の趣意は、弁護人吉田良夫作成名義の控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用し、これに対して、当裁判所はつぎのとおり判断する。

一、弁護人の控訴趣意一ないし四の論旨について

所論に徴し、記録を調査してみても、原裁判所が被告人の本件所為を物品税法四四条一項一号に該当すると判断するに際し、税務当局の通達のみに基づいてなしたとは認められないから、所論のうち原裁判所が税務当局の通達のみに基づいて右の判断をしたことを前提とする主張はすべて理由がない。なお、所論にかんがみ若干補足すると、そもそも物品税法が特定の物品を選定し、これに税を課す趣旨は、主として、当該物品のもつ、しやし性、装飾性、し好性などを考慮し、それらの物品を消費する者の担税力に着目する点にあり、かかる観点から同法別表番号一の2において規定される「貴石または半貴石を用いた製品」の意義を考察すると、当該物品に使用されている素材の一部に貴石、半貴石が使用されているときは、それらの物品は貴石または半貴石を用いた製品であると解すべきである。この見地に立つて、原判決の挙示する証拠を検討すると、原判決が原判示各物品は、物品税法における第一種課税物品である貴石または半貴石を用いた製品にあるとした判断は相当である。

また、原裁判所は原判示事実を有罪と認定し、科刑したのであるから違法性があると判断したことは明らかであり、有罪判決をするには右のような違反性の有無を判示しなければならないものではない(本件物品が物品税法で定められた第一種課税物品でないとの主張は刑訴法三三五条二項により判断を示さなければならない主張に該当しないことは明らかである)から、原判決にこの点に関する判示がないからといつて原判決の理由中に矛盾・齟齬は認められない。論旨は理由がない。

二、弁護人の量刑不当の論旨について

所論に徴し、記録を調査し、これによつて認められる諸般の情状、とくに、被告人は昭和四三年八月ころから貴石画の販売会社の外売人として稼働していた間、右会社の社長から一定価格以上の貴石画を販売すると、これに対し、物品税が課せられること、右課税を免れるため、販売価格を下げるなどして当該物品が課税対象とされる金額に満たないものであるよう偽装していることを見聞していたものであり、本件物品税のほ脱方法も右のような方法で巧妙に行つていること、本件ほ脱税額が一八三万余円にのぼること、右ほ脱額が納付されているとは認められないことなどを総合すると犯情必ずしも軽くなく、被告人においては本件ほ脱税額を納入すべく国税当局に自己の預金通帳を預けるなどして合計金一二五万円を提供したことがあるほか被告人にとつて酌むべきすべての情状を十分考慮しても、原判決の量刑が重きに過ぎ不当であるとは認められない。論旨は理由がない。

よつて、刑訴法三九六条により本件控訴を棄却し、当審における訴訟費用は同法一八一条一項本文を適用してこれを全部被告人に負担させることとし、主文のとおり判決する。

(裁判官 石崎四郎 佐藤文哉 中野久利)

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