大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(く)149号 決定

被告人 村松和行

〔抄 録〕

しかして、一件記録によれば、被告人は、本件各勾留にかかる前記昭和四八年合(わ)第五一号、第八七号被告事件の各罪を犯したと疑うに足りる相当の理由があり、爆発物取締罰則一条所定の法定刑に照らすと、被告人には刑訴法八九条一号に該当する事由があることは明白である。のみならず、右の各犯行は左翼過激派集団に属する多数の者によって敢行された組織的、計画的犯行であって、事案の性質上、共謀の具体的内容や実行行為における各人の具体的行動等立証の重要部分は、これに関与した被告人及び共犯者の供述にその多くを依存せざるをえないと認められるところ、被告人は、公判廷において、併合審理を受けている他の共同被告人らとともに、本件各公訴事実及び前記昭和四八年合(わ)第一四八号被告事件(ピース缶爆弾製造事件)の公訴事実を全面的に否認していること、共同被告人及び相当数の共犯者の証人尋問が予測されるが、現在、共犯者の供述としては、右ピース缶爆弾製造事件に関与したといわれる石井ひろみの証人尋問が終了し、右事件及び本件同年合(わ)第八七号被告事件(第八、第九機動隊爆破未遂事件)に関与したといわれる内藤貴夫の証人尋問が続行中で、次回公判期日には同証人の取調を了したうえ、江口良子の尋問に入り、次いでは既に決定ずみの本件一連事件の中心人物といわれる増渕利行の証人尋問の実施が遠からず予定されていることなどの諸状況に徴し、現段階において被告人を釈放すると、被告人が組織力を利用して共犯者ら関係人に働きかけ、或はこれらの者と通謀するなどして自己に有利な証拠を作出する等罪証を隠滅する行為に出る虞のあることは否定し難いので、所論指摘の刑訴法八九条五号に該当する事由までは見出し得ないものの、同条四号には該当する事由があるといわねばならない。

しかも、本件各被告事件を含む前記各被告事件は、これまで二九回にわたり公判が開かれたが、前叙の如く、被告人及び他の共同被告人らはいずれも本件各被告事件及び前記ピース缶爆弾製造事件について全面的に無罪を主張し、検察官申請の書証の大部分を不同意にしたため、多数の証人調べが必要になったこと、その他これら事案の重大性、複雑性、被告人らの公判態度、これまでの証拠調べの進捗状況等諸般の事情に照すと、本件各勾留が二年半以上に及び、被告人の拘禁が長くなっているとはいいうるけれども、未だ本件各勾留が不当に長いものであって、刑訴法九一条一項に該当するものであるとまでは認められないというべきである。

そこで、次に、本件において原裁判所が裁量により被告人の保釈を許した措置の当否につき検討すると、本件各勾留事件の罪の法定刑が、死刑又は無期若しくは七年以上の懲役又は禁錮という極めて重いものであること、被告人の保釈を許した場合前記のとおり罪証隠滅の虞があること、事案が重大で、本件各被告事件の社会に与えた影響も少くないことその他被告人の経歴、本件各被告事件における役割等を総合し、前叙のような証拠調の進行段階にあることに照らして考慮すると、被告人の勾留が前記のとおり長くなっているとはいえ、この段階で被告人の保釈を許可した原決定は、裁量権の行使を誤った不当なものというべきである。

(木梨 時国 佐野)

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