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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)1972号 判決

一(一) 控訴人が本件特許権を有すること、本件発明の願書に添付した明細書の特許請求の範囲の記載が次のとおりであることは、当事者間に争いがない。

「協働する先細パンチ装置と先細圧穿台装置を有し、更に該パンチ装置により導入されるべき圧穿台装置中に形成された反応室を有し、ガスケツト装置が該先細パンチ装置と該圧穿台装置の該先細壁部分との間に挿入されていることを特徴とする高温高圧装置。」

(二) 右事実によれば、本件発明は、高温高圧装置に関するものであり、

(1) 先細パンチ装置と先細圧穿台装置を有すること

(2) 右先細パンチ装置と先細圧穿台装置が協働するものであること

(3) 圧穿台装置中に反応室が形成され、右反応室にパンチ装置が導入されるものであること

(4) ガスケツト装置が先細パンチ装置と圧穿台装置の先細壁部分との間に挿入されていることをその構成要件とするものであることが認められる。

二 しかしながら、右にいう高温高圧装置とはどのようなものか、パンチ装置および圧穿台装置がどのような形状の場合に前記一(二)(1)にいう「先細」の構成要件を充たすことになるのか、先細パンチ装置と先細圧穿台装置とがどのような態様および程度で力を及ぼし合えば前記一(二)(2)にいう「協働」にあたるのかなどは、前記特許請求の範囲の記載のみでは一義的に明白とはいえない(技術水準等からみて明白であると認めるに足りる証拠はない。)。

そこで、これらの点について本件明細書の発明の詳細なる説明および図面を参照して解釈しなければならない。

(一) 高温高圧装置

成立に争いのない甲第二号証(本件発明の特許公報)の記載(第一頁左欄第13行~26行)によれば、本件発明にいう高温高圧装置とは爆発することなく長時間摂氏数千度の高温および四万気圧から一〇万気圧程度の高圧を維持する装置をいうものであり、公報第4図(その中心部は第5図)のような構造をもつものがその具体例(公報第一頁右欄第36行)であることが認められる。

(二) 先細パンチ装置および先細圧穿台装置の形状

「先細」とは、一般に、先端の方に向かつて漸次細くなる傾斜(技術用語としては、いわゆるテーパー)をいう語と考えられるが、前記特許請求の範囲の記載によれば、先細パンチ装置と先細圧穿台装置は「協働」(その詳細は後記する。)するものであつて、前記甲第二号証の記載(とくに、第一頁左欄第36行~右欄25行、第二頁右欄第13行~20行、第25行~35行、第三頁左欄第15行~22行)によれば、本件発明においては、右両者の「協働」によつて、従来周知のパンチ(ピストン)と圧穿台(閉端筒体、シリンダー)から成る高温高圧装置において、パンチ、圧穿台の破壊の要因である、両者についてのいわゆるポアソン効果(ポイゾン効果)および圧穿台についてのいわゆるフープ破壊力に対抗する応力を発生させようとするものであることが認められる。このことからすれば、パンチ装置と圧穿台装置の先細であることを必要とする部位も右の「協働」が行われる部位との関連において検討すべきであると解される。

前記甲第二号証によれば、本件明細書の発明の詳細な説明欄には、右パンチ装置と圧穿台装置との「協働」に関して、「パンチ23、23´は……圧穿台集合体42との関連で使用される。先細パンチ及び先細圧穿台室のこの組合わせは、パンチ及び圧穿台の両者の強さに貢献する。」(第二頁右欄第13行~20行)、「傾斜面24及び35の特別の組合わせは、力分解効果に貢献する。即ち前記先細面は、第一図における筒状パンチ10上に加えられた実質的に垂直方向のみの力を、第4図のパンチ23上の水平及び垂直方向の力の組合わせに分解する。」(第二頁右欄第32~35行)、(パンチ23の傾斜24と先細圧穿台表面35との間の組合わせ及び協力関係は、装置の能力を高温度及び高圧に抵抗するよう大いに増加せしめる装置として図示され、かつ記載された。」(第三頁右欄第1行~4行)、「第1図に示された放射線状方向引張り破壊を防ぐために、室壁35は単に横方向のみの力だけを受けない、何となればパンチ及び圧穿台装置の組合わせが圧穿台33の力を、室34及び壁35の水平中心線における純粋な横方向より壁35の上方極限における垂直方向に到達するよう分解するからである。彎曲面35を通つて伝達される軸方向荷重は壁35の上方部分を軸方向圧縮応力下に置く……」(第三頁左欄第15行~22行)との記載があることが認められる反面、「協働」に関する記載中には、具体例に示された後記截頭円錐部分40および40´について触れた部分は全くない。右の事実に照らし、かつ前記明細書記載の従来技術とも対比して考察すれば、本件発明におけるパンチ装置と圧穿台装置の「協働」の部位は、パンチが加圧のため圧穿台の中央孔に移動(導入)したとき相互に後記のガスケツトを介して触れ合うよう対向した(近接したと言つてもよい。)部分、すなわちパンチの側ではパンチ23の傾斜面24のうち圧穿台の次記部分と相対するところであり、圧穿台の側では右パンチ23の傾斜面24と相対する彎曲部分(いずれも、ガスケツト介在により、ある程度幅のある範囲)であるとみるべきである。したがつて、本件発明における先細パンチ装置と先細圧穿台装置が先細であるべき部位も、これに対応して、それぞれ右の「協働」の部位(以下「協働部位」という。)に含まれていなければならないと解される。

そうすると、本件発明における先細圧穿台とは、協働部位において圧穿台が傾斜面を形成しておればよく、圧穿台中央孔の内壁が垂直部分を有するような形状の圧穿台であつてもよいと解するのが相当である。

もつとも、前記甲第二号証によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、圧穿台の形状に関して、「第4図の具体例において、壁35は、圧穿台33の水平中心線において約0.4inの中心線上の開孔部と会合する一対の截頭円錐部分40及び40´により規定される(本判決注、この「截頭円錐」とは、中央孔の空間の形状からみた表現と解される。)。

截頭円錐部分は、約1/4in伸出して垂直線に11度の角度をなす。円滑なフレア付き或は彎曲部分41及び41´は截頭円錐部分40及び40´を圧穿台33で始まる前述の7度の勾配を与えるよう連続的な表面を提供する。」(第三頁左欄第31行~第37行、第4図および第5図)との記載があり、圧穿台の水平中心線から垂直線に対してある角度をもつて傾斜する截頭円錐部分ならびにそれに続く円滑なフレア付きあるいは彎曲部分をもつことが示されていて、一見、右円錐部分を含めた意味で「先細」というように思われるが、「第4図の具体例において」との記載からも明らかなように、これは本件発明の実施の一態様を示すものに過ぎず、圧穿台内壁が傾斜すること自体の作用として、これに加わる内圧がある程度分解されるとしても、それはパンチと圧穿台との「協働」によるものとはいえないし、右傾斜と相まつてはじめて協働部位における「協働」が効を奏すると認めるに足りる証拠はないから、圧穿台の中央孔の内壁が前記協働部位から中央部に向かつて傾斜していることは、本件発明の構成要件ではないと解するのが相当である。

(三) 先細パンチ装置と先細圧穿台との「協働」の態様およびガスケツトの作用

前記甲第二号証によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、パンチ装置と圧穿台装置との「協働」に関して前記(二(二))のような各記載があるほか、前記のように特許請求の範囲には「ガスケツト装置が該先細パンチ装置と該圧穿台装置の該先細壁部分との間に挿入されていること」との記載があり、また発明の詳細な説明欄にも「……その中に収斂発散孔を有する環状抗圧部材即ち圧穿台が、一対の相対する細先パンチの間に共軸的に配置される。反応容器は、パンチ及び抗圧部材の間の各パンチ上のガスケツトと共に収斂発散孔中に配置される。」(公報第一頁左欄第30行~34行)、「反応容器の突出は、反応容器を囲繞するよう、またパンチ集合体29、29´及び抗圧圧穿台42の間の密封部として作用するよう配置された複合ガスケツト集合体によつて防止される。」(第一頁右欄第39行~42行)と記載されていて、この種の装置においては、ガスケツトがパンチと圧穿台の協働部位の間隙に挿入され、反応室の密封機能(これによつてはじめて、反応室を高圧下に保つことができることは当然といえる。)を有することが示されていること、明細書の発明の詳細な説明におけるパンチと圧穿台との形状、構造および相互の協力関係(相互支持ないし相互補強)の説明は、すべて図面(主として第4、5図)を参照してなされているが、図面に示される装置にはパンチと圧穿台の各先細部分の間にガスケツト44、45、46が挿入されていることからみて、明細書におけるパンチおよび圧穿台の組合わせおよび協力関係の説明は、すべてがガスケツトの介在を前提として述べられているものとみるべきであり、ガスケツトがパンチと圧穿台との間に介在しているとすれば両者が直接に接触する機会はないわけであるから、パンチと圧穿台との「協働」はつねにガスケツトを介して行われるとみるべきことは当然である。

しかも、ガスケツトは一般にパツキングと同じくパイプ等の継ぎ目や栓をした時の隙間を埋める詰めものであるから、その第一の目的が密封にあることは明らかであるが、前記甲第二号証によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、ガスケツトはピロフイライト(パイロフイライト)のごとき窯業製品で作られ、変形しうるものである旨(第三頁右欄第13行、第28行~30行)および「……ガスケツトは、三種の附加的機能を果す。第一に室内容物の封鎖、第二に圧穿台に関するパンチの比較的大きい運動を可能ならしめること、第三に抵抗加熱が使用されるとき穿孔台とパンチとの間に電気絶縁を与えることである。」(第三頁右欄第19~23行)との記載があり、圧力伝達に直接触れていないものの、ガスケツトには、パンチの移動(ストローク)を可能にしつつ、その移動により圧穿台との間に変形、押圧されて高圧の反応室を密封する状態になれば、パンチの力を圧穿台に伝達する力が具わつているとみるべきである。

このことは、「材料(本判決注、ガスケツト材料のこと)の剪断強さは、パンチの運動に過度に抵抗するのではなく、作動循環のすべての部分において、ガスケツトが破裂するのを防止するに充分大でなければならない。」(第三頁右欄第39行~42行)との記載によつてもうかがうことができる。

そして、前記甲第二号証によれば、本件明細書の発明の詳細な説明には、パンチと圧穿台との組合わせおよび協力関係に基づく効果として、パンチ側については、「先細パンチ23では、前記力(本判決注、圧縮力のこと)は22のごときパンチの一面のみでなく、先細表面24によつてもまた対抗される。この故に、先細パンチは効果的に圧縮され、かつ構築され、かつその強さはより効果的に使用される。」(第二頁右欄第21行~25行)との記載があり、他方圧穿台側については、「パンチ23の力は圧穿台33の室34の先細表面35に伝達される。」(第二頁右欄第26行~27行)、「これ等の力は横方向即ち水平方向であるのみでなく、室34の水平中心線における完全なる水平より、壁35の傾斜の進行にともなつて水平及び垂直の組合わせの方向に進展する。」(二頁右欄第28行~32行)、また、「第一図に示された放射状方向引張り破壊を防ぐために、室壁35は単に横方向のみの力だけを受けない、何となればパンチ及び圧穿台配置の組合わせが圧穿台33の力を、室34及び壁35の水平中心線における純粋な横方向より壁35の上方極限における垂直方向に到達するように分解するからである。」(第三頁左欄第15行~20行)、「彎曲面35を通つて伝達する軸方向荷重は壁35の上方部分を軸方向圧縮応力下に置く、またこれに対する反動としてフープ圧縮の成分が発生する。」(第三頁左欄第20行~23行)と記載されている。

以上のことからすれば、本件発明においては、パンチと圧穿台の力の伝達、分解とこれによる相互支持は、パンチと圧穿台とがガスケツトを介して組合わされた協力関係に基づいて生ずるものであり、結局、本件発明は、既知の技術であるパンチと圧穿台をそれぞれいわゆる「予加圧」すること、パンチを先細形状にしていわゆる「質量支持」をすることという補強方法を用いる(前者については前記甲第二号証((公報))第二頁左欄第17行~右欄第6行、同頁右欄第38行~第三頁左欄第6行の記載により、後者については同公報第二頁左欄第4行~17行の記載により、認められる)ほかは、右の組合わせおよび協力関係のみによつて、その目的とする摂氏数千度の高温および四万気圧から一〇万気圧程度の高圧を長時間維持しうる装置を提供する発明とみるべきである。そして右のようなパンチと圧穿台との協力関係を「協働」と名づけたものと考えられる。

三 他方、控訴人が被控訴人装置として主張する装置は、第一次に別紙第一目録(〔編註〕省略)、第二次に別紙第二目録(〔編註〕省略)記載のとおりである。

(一) まず、被控訴人が別紙第一目録の装置を使用していたかどうかについての当裁判所の認定は、原判決認定のとおりであるから、原判決理由六の記載(原判決72丁表一行目から73丁裏末尾から三行目まで)をここに引用する。

成立に争いのない乙第四号証および甲第一一号証の二(いずれも特許公報―原判決引用部分記載の南アフリカ特許に対応する石塚博の国内出願についてのもの。なお、これにつき控訴人の異議申立が昭和四二年に認められている。甲第一一号証の一)も、右認定に影響はない。

そうすると、被控訴人が別紙第一目録記載の装置を使用したことの立証はないから、本訴請求中、被控訴人が別紙第一目録記載の装置を使用したことを前提とする損害賠償請求ないし不当利得返還請求は、いずれも理由がない。

(二) 原審における第一、二回の検証結果と弁論の全趣旨をあわせると、被控訴人が別紙第二目録記載の装置を使用していたことが認められる。

1 ところで、別紙第二目録記載の装置(以下、「被控訴人装置」という。)は、その第三図(a)および(b)に示されているとおり、圧穿台の内壁A1―A2の部分がすべて垂直の壁面となつていて、本件発明の実施例のようにパンチに対向する部分が彎曲しておらず、A1、A2点(被控訴人のいうシールポイント)で急激に垂直線から各五五度の角度(原審における鑑定人小泉光恵の第一、二回鑑定の結果で認める。)をなす線で外側に延びている。しかし、圧穿台の協働部位が彎曲していることは本件特許請求の範囲に記載されておらず、「先細」と限定されているだけであり、その意味は協働部位におけるそれであることは前記のとおりであるから、被控訴人装置の圧穿台がA1、A2点から外側(本件発明における協働部位の一部に相当する。ただし、被控訴人装置において「協働」があるかどうかは後記)に傾斜面を有する以上、これを先細壁と解し、圧穿台を先細圧穿台と解して妨げがない。もつとも、各鑑定の鑑定書第一図(プレス見取図)でみると、右傾斜は主として、圧穿台を既知の質量支持の作用で破壊から保護するためのものとも考えられるが、先細とは傾斜面を有するという形状の問題であるから(なお、後記のように、右傾斜面はともかくガスケツトを介してパンチ(ピストン)とある程度は協力関係にある。)右解釈を左右するに足りない。

そうすると、被控訴人の装置も本件発明にいう先細パンチ装置(パンチの「先細」の点は、とくに争いがない。)と先細圧穿台装置を有するというべきである。

2 そこで、被控訴人装置ではパンチの先細部分と圧穿台の先細壁がガスケツトを介して「協働」しているといえるかどうかについて検討する。

本件発明におけるパンチの先細部分と圧穿台の先細壁の協働はガスケツトを介してなさるべきものであることは、前に述べたとおりである。

ところで、別紙第二目録の図面(a)および(b)によれば、被控訴人装置においては、ガスケツトはパンチの作動前はパンチ先細部分にのみ接し圧穿台先細壁に接しているとはいえないが、本件発明における「ガスケツト装置が該先細パンチ装置と該圧穿台装置の該先細壁部分との間に挿入されている」とは、前記のように、反応室の密封、パンチの運動のほか、パンチ先細面と圧穿台先細壁とのガスケツトを介しての協働のためであるから、パンチ作動前にはガスケツトと圧穿台先細壁との間に隙間があつても、パンチが移動するに従い、パンチ先細面と圧穿台先細壁との間にガスケツトが変形、密着してパンチ先細面からの力を圧穿台先細壁に伝達すればよい筈である。そうすると、前記のようにパンチの静止状態においてガスケツトが圧穿台先細壁に密着していないからといつて、それだけで被控訴人装置が本件発明の構成要件(前記一(二)(2)、(4))を充足していないとはいえないことは明らかである。

そこで、被控訴人装置においても、本件発明におけるようにパンチ先細面と圧穿台先細壁の間に力の伝達、分解が行われるかどうかおよびその程度について検討する。

成立に争いのない甲第六号証(鑑定書と題する書面)と原審証人箕村茂の証言をあわせれば、箕村茂(当時東京大学助教授)および福長脩(当時科学技術庁無機材質研究所主任研究官)は、被控訴人装置に近似した装置を用いて実験をした結果、ダイヤモンド合成最低圧五五、〇〇〇気圧程度においては、約二mmの幅で圧穿台先細壁面にガスケツトがダイ・プロテクター(チヤンバープロテクター)を通じて接触し、パンチからガスケツトを通じて上記接触面に一定の力が伝達されていると推定される結果を得たこと、上記圧力発生にはパンチ総荷重で二一〇~二五〇トンを要するがパンチ総荷重二一〇トンの場合は三〇~三七トンの力が、二五〇トンの場合は三七~四三トンの力が圧穿台の垂直方向、水平方向成分に分解されて圧穿台先細壁に作用し、うち前者の場合は約二五~三〇トンの力が、後者の場合は三〇~三五トンの力が垂直成分として作用すると判断されたことが認められる(なお、甲第六号証の図7、8(a)(b)(c)参照)。

ところが、原審における第二回検証の結果によれば、被控訴人装置の圧穿台傾斜部にラツカー・マジツク・アオタケ等を塗布し加圧後におけるその変化をみたところ、圧穿台中央孔内壁面(反応室内壁)の塗料は殆んどおちていたのに対し、圧穿台の傾斜(先細)面の縁部(外側)あたりにおいては塗料の剥離のある部分が認められるものの、その面積と程度はごく小さいもの(白色塗料の部分で〇、八±〇、二ミリメートル、紫色の塗料の個所で〇・七五±〇・二ミリメートル、黄色塗料の個所で〇・九±〇・二ミリメートルの幅)であることが認められ、このことから、圧穿台において、A1、A2点(全体としては円形)のみならず、傾斜(先細)面にもパンチから垂直方向の分力が及ぶけれども、それのみでは、本件発明が目的としている高温高圧を生ぜしめその中における圧穿台の破壊を防止するに足りるほど強力な相互支持の作用を有するものではないと考えられる。

それにもかかわらず、原審における鑑定人小泉光恵の鑑定結果(第二回)によれば、右装置によりダイヤモンドを生成したことが認められる。

さらに、被控訴人装置では、反応室に「中空円筒体」(第二目録図面E)を圧穿台内壁に接して載置するのが特徴であるところ、右「中空円筒体」を除いて、パンチ・圧穿台・ガスケツトの三者の組合わせのみでこれを作動させた場合、装置が破壊して本件発明の目的とするような高温高圧装置としての使用に耐え得ない(したがつてダイヤモンドを生成し得ない)とすれば、被控訴人装置においては、本件発明の技術的範囲に属しない別の技術を用いてはじめて右目的を達すると考えられることは、前に述べたところから明らかである。

ところが、成立に争いのない乙第二六号証(実験報告書)および当審証人細見暁の証言をあわせると、同証人らの実験結果では、焼結アルミナ製中空円筒体を用いた場合は安定してダイヤモンドが得られたが、中空円筒体を取り除いてその部分にガスケツトと同質の材料(軟質の焼成ろう石)を充填して行なつた場合はダイヤモンド合成に必要な圧力を発生することなく圧穿台に横割れが生じて破損したことが認められ、このことと、成立に争いのない乙第一八号証ないし同第二〇号証の一、二により認められるところの、石塚博が前出乙第四号証のものと別に特願昭四〇―五一五八四号をもつて出願した中空円筒体を用いる高温高圧装置が昭和五〇年二月一二日に特許査定されたこととをあわせて考えれば、被控訴人装置は、中空円筒体を使用することによつて、圧穿台の垂直壁にかかる圧穿台材質の耐え得る以上の内圧を減衰し、パンチと圧穿台の前記のようなある程度の協力関係と相まつて、所期の目的を達しているものと推認される。

成立に争いのない甲第九号証(箕村、福長の報告書)、同第一三号証(ボベンカークの供述書)その他本件の全証拠をもつてしても、中空円筒体には前記のような圧力減衰効果があるとの心証を動かすことはできない。前記小泉光恵の鑑定結果(第二回)、前記甲第九号証、同第一三号証と前記箕村茂の証言、前記乙第二六号証、前記細見暁の証言をあわせると、前記各実験等で用いられたガスケツトの材質は、甲第九号証、同第一三号証の実験ではパイロフイライトであり、小泉鑑定(第二回)では低温型石英をバインダーで固めたものであり、乙第二六号証の実験では焼成ろう石であつて相異なつており、また甲第一三号証のものでは、中空円筒体の上下にパンチに接してコバルトタングステンカーバイト製の部材が入れられていて、この点乙第二六号証のものとは異なることが認められ、かように反応室における材料の構成、材質の相違によつて、ダイヤモンドが生成したり、甲第九号証、同第一三号証におけるようにガスケツトの流出、内容物の噴出や中空円筒体の破壊により目的を達しなかつたりすることは、十分考えられるのである。なお、箕村茂らによる甲第六号証の実験では、中空円筒体の作用についてはとくに触れるところがない反面、箕村の証言では、中空円筒体の圧力減衰効果がある程度は存することを肯定している。

したがつて、被控訴人装置は、本件発明のように先細パンチ・先細圧穿台・ガスケツト三者の組合わせのみによつて高温高圧を長時間維持し得る装置とは認め難い。したがつてまた、この意味で、被控訴人装置においては、先細パンチと先細圧穿台とは前記のような「協働」をしているということもできない。

3 そうすると、被控訴人装置が本件発明の技術的範囲に属するとはいえないから、これに属することを前提とする控訴人の被控訴人装置に関する特許権侵害による損害賠償、さらに不当利得の請求は、いずれも理由がない。

四 以上の次第で控訴人の当審における新たな請求をいずれも棄却することとする。(なお、原審における各請求は当審において訴えの交換的変更がなされたことにより取下げられたので、右については判断を要しない。)

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