大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(ネ)2346号 判決

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一当裁判所も、控訴人の被控訴人らに対する各請求はいずれも理由がなく、これを棄却すべきものと判断するものであつて、その理由は、次のとおり訂正・付加するほか、原判決の理由説示と同一であるからこれをここに引用する。

1  <省略>

2  原判決一七枚目表末行と同一八枚目表一行目との間に次の説示を加える。

「控訴人は種々の理由をあげて本件一の土地についての中島とあすなろ興業間の賃貸借契約の存在を争うが、あすなろ興業から中島に対し権利金の一部が支払われていることは先に認定したとおりであるし、<証拠>によると、必ずしも常時継続的にではないにせよ地代支払の事実も認められるところであり、なお、賃貸借契約書の存否に関する<証拠>も直ちに右契約の存在を否定する証拠となり得ないことはもちろんである。また、中島があすなろ興業の代表者であつたことから直ちに両者間に明確な法律関係を設定する契約がなかつたもの、あるいは右契約が通謀虚偽表示による仮装の契約であつたものと即断することはできない。そして他に中島とあすなろ興業間に賃貸借契約が成立したとの前記認定を左右する証拠はなく、また右契約が通謀虚偽表示によるものであることを認めるに足りる証拠もない。

また、控訴人は、右に認定した本件三の建物建築に当たりあすなろ興業が東調布信用金庫から融資を受け、右建物に抵当権を設定した際、中島との間で、中島は抵当権実行による建物所有権の移転に伴う借地権の移転を無償で承諾する旨の約定がなされたとの点について、乙第五号証(抵当権設定金銭消費貸借契約公正証書)の第一二条は、抵当権実行の場合、あすなろ興業が競落人に対し敷地の賃借権も無償で譲渡することを明文化したものにすぎないと主張し、回答書とある部分については証拠によつて成立を認めることができ、その余の部分の成立は<証拠>もこれにそうている。しかしながら、右乙第五号証は、あすなろ興業が東調布信用金庫から融資を受け、同金庫のため本件三の建物に抵当権を設定すると同時に、あすなろ興業の代表者である中島が連帯保証をし、かつ同金庫のため本件一の土地に抵当権を設定する旨の契約書であつて、中島もまた契約当事者として加わつているものであり、右第一二条にいう「抵当権設定者」とは、特に限定がない以上建物所有者で土地貸借人であるあすなろ興業とともに土地所有者で土地賃貸人である中島も含むと解するのが自然である。そしてこのように解した場合、右第一二条は、あすなろ興業については競落による建物所有権移転に伴い賃借権も移転することを承諾すること(これはむしろ法律上当然のことである。)、中島については右賃借権の移転を予め承諾することを意味するところ、右各承諾の相手方は契約書上契約の相手方である東調布信用金庫と解されるが、一通の契約書において中島、あすなろ興業の両者がいずれも右のような承諾をしているという点に、中島があすなろ興業の代表者である点をあわせ考えれば、結局右契約書が作成された昭和三二年一二月二三日当時、中島はあすなろ興業に対しても抵当権実行による本件三の建物の所有権移転に伴う敷地賃借権の移転を予め承諾したものと認めるべきである。よつて前掲各証拠は採用できず、他に右認定を左右する証拠はない。」

3  原判決一八枚目裏七行目に「……相当であり、」とあるのを「……相当である。」と改め、同「又賃貸借……」以下同一九枚目表二行目までの説示を次のとおり改める。

「そして、建物保護法により賃借権が対抗力を有するとされる場合には、建物の登記のみによつて賃貸借契約のすべての内容につき対抗力が生ずるもの、換言すれば、賃貸借の目的たる土地の所有権を取得した者は旧所有者と賃借人間における賃貸借契約を包括的に承継するものと解すべきであり、したがつて旧所有者と賃借人間に賃借権譲渡許容の特約が存するときには新所有者は右特約に基づく義務をも承継するものというべきである。これを本件についてみるに、<証拠>によれば本件三の建物については昭和三二年一二月四日あすなろ興業のため所有権保存登記がなされていることが認められるから、本件一、二の土地の所有権を取得してそれぞれ昭和四六年一一月二九日、昭和四四年一一月二七日所有権移転登記を経由し、右各土地の賃貸人となつた控訴人は、本件賃借権譲渡許容の特約に基づく義務、すなわち抵当権実行による本件三の建物の所有権移転に伴う賃借権の移転を承諾する義務を承継し、したがつてその後本件三の建物の所有権を競落により取得して昭和四六年一二月二一日所有権移転登記を経由し、賃借権の譲渡を受けた被控訴人諸橋は右賃借権の取得を控訴人に対抗できるものといわなければならない。なお、以上の理は本件一の土地の所有権取得が競落によるものであつても何ら異なるいわれはない。」<以下、省略>

(室伏壮一郎 横山長 河本誠之)

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