大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 昭和50年(ネ)473号 判決 1978年1月26日

控訴人

梅田晃

右訴訟代理人

佐々木黎二

外三名

被控訴人

三段崎俊吾

右訴訟代理人

馬塲東作

外二名

主文

控訴人の当審における請求を棄却する。

当審における訴訟費用は、控訴人の負担とする。

事実《省略》

理由

一被控訴人が昭和四四年六月二〇日、控訴人に対し、金一、六五〇万円を、利息は日歩四銭とする約定で貸渡したことは当事者間に争いがない。

そして、<証拠>によれば、次の事実を認めることができる。

1  控訴人は、被控訴人との間で、本件借受金の弁済期を昭和四五年八月末日と定め、その弁済方法について次のとおり約定した。

(い)  控訴人ほか一〇名が訴外梅田きよから相続により取得した神奈川県二宮町二宮字教泉寺所在の土地を昭和四五年八月末日までに売却し、その代金のうち控訴人の相続分六分の一に相当する金額をもつて一部弁済に充てる。(ろ) 債務残額については、控訴人保有の訴外会社の持分一九分の三を、その弁済に代えて、被控訴人に譲渡する。(は) もし右期日までに前記土地を売却することができない場合は、本件持分を本件借受金の元利金合計額の弁済に代えて、被控訴人に譲渡する。但し、昭和四七年六月一九日までに控訴人が本件借受金の元利金を一括して弁済したときは、被控訴人は譲渡を受けた本件持分を控訴人に返還する。

2  控訴人と被控訴人とは、本件借受金の貸借に当り、不動産鑑定士の鑑定の結果に基づいて、訴外会社の純資産額を金九、一〇〇万円と評価し、持分一九分の一の価額を金四七八万九四七〇円と算定した。従つて、本件持分の価額は金一九一五万七八八〇円となるが、本件借受金の弁済期である昭和四五年八月末日現在におけるその元利合計額が一九三九万〇八〇〇円となるので、控訴人と被控訴人とは、本件持分の価額と右元利合計額がほぼ同価額であることを確認したうえ、後日右両価額の差額は清算しない旨合意した。

3  前記土地は昭和四五年八月末日までに売却されなかつた。

二前記当事間に争いがない事実及び認定事実によれば、本件持分の譲渡についてされた前記約定は、いわゆる譲渡担保契約ではなく、買戻特約付の停止条件付代物弁済契約であつて、清算義務を伴わないものと解するので相当であり、被控訴人は、昭和四五年八月末日の経過により、本件借受金の元利金の弁済に代えて、本件持分の譲渡を受けたものというべきである。

従つて、本件持分の譲渡に関する約定が清算型の譲渡担保契約であることを前提とする控訴人の本訴請求は、その余の点について判断するまでもなく、失当であるといわねばならない。

なお、被控訴人が昭和四五年八月末日の経過により本件持分の譲渡を受けたことは前記のとおりであり、右譲渡について同年九月一日訴外会社の他の社員全員の承諾を得たこと及び控訴人が買戻期間である昭和四七年六月一九日までに本件借受金の元利合計額を弁済して本件持分を買戻すことができなかつたことは当事者間に争いがないから、右期日の経過により、被控訴人の本件持分の取得は確定したものというべきである。

三よつて、控訴人の本訴請求を棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法第九五条、第八九条を適用し、主文のとおり判決する。

(枡田文郎 山田忠治 佐藤栄一)

計算書<省略>

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例