東京高等裁判所 昭和50年(ネ)760号・昭50年(ネ)1993号 判決
前記認定事実によると、本件事故について、被控訴人健二の運転する被害車も、深夜の本件交差点を対面信号が黄色に変った直後に右折するにあたって、対向直進車の走行の安全を十分に確めなかった過失があるというべきである。なるほど、前記事実の経過を辿ると、加害車が制限速度を遵守して走行しておれば、加害車は交差点の手前の法定の停止地点で停止し、被害車は無事右折を終えた可能性があるといえる。しかし、交通整理の行なわれている交差点でも、対面車線の信号が青色から黄色に変った直後に右折をするようなときには、対向直進車両の安全を確認したうえで右折する注意義務があるというべきである。
一般的に直進車輛は、信号の推移に注意を払い、交差点に接近すべき注意義務があり、最高制限速度五〇粁毎時の道路においては、時速五〇粁の車輛が安全に停止できる制動距離に相応する距離が交差点入口までにある地点で、対面信号が黄色に変れば、その地点に達していない車輛はすべて交差点入口手前で停止すべき注意義務がある(もし、停止しないときは信号無視ということになる)。これに対し、時速五〇粁の車輛が安全に停止することができる制動距離に相応する距離が交差点入口までにない地点に接近してから対面信号が黄色に変った場合には、右制限速度を守って走行していた車輛は勿論、最高制限速度五〇粁を超過して走行している車輛も交差点を通過したからといって、黄色表示を看過しまたは無視したという注意義務違反はないというべきである(最高裁一小法廷昭和四七年五月四日判決・刑集二六巻四号二五五頁参照)。
要するに、対面信号が黄色に変ったからといって、いまだ交差点に進入していない直進車輛のすべてが交差点の手前の法定の停止地点で停止するとはかぎらず、最高制限速度内で走行している車輛の場合、安全に停止できる制動距離に相応する距離が交差点の入口までにない地点に接近してから対面信号が黄色に変ったときには、まったく減速せずに交差点を通過することが許されているのであり、また、制限速度を超過して走行している車輛の場合も、右と同様な状況の下で対面信号が黄色に変ったときには右と同様交差点前で停止できないので、進行をつづけ交差点を通過できるのであって、これを以て信号無視だということはできない(もっとも、右のように速度違反をしているので、減速その他事故発生もしくは軽減のため万全の注意を払うべき義務があるといわねばならない。それ故、これらの違反がある以上、直進車優先の保護をうけられないことは前述のとおりであるが。)。従って、右折車としても右のような事態のあることを予想すべきであって、対面信号が黄色に変った直後に右折をする場合には、右折車は、右のような予想の下に対向直進車輛の安全を確認したうえで対向車線を右折する義務があると解するのが相当である。
(伊藤 小山 山田)