大判例

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東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)112号 判決

原告 佐藤新作

被告 栃木県選挙管理委員会

〔抄 録〕

公職選挙法第六八条第五号の他事記載とは、無意識、不用意になされた汚斑、句読点、他意なく生じた書損じ、誤字、むだ字又は誤記の抹消、訂正の記載を除き、意識的な符号、目印とみられるべき性質をもつ記載をいうと解すべきところ、本件検証の結果からすると、本件投票に記載された「○」印は直径約一ミリメートルの丸印であって、小さな印ではあるが、他の記載と明確に識別できる目印風のもので、「サトウ」の文字の記載の上部にこれと近接して記載されており、前述の除外例のいずれにも当らないのみならず、その位置、形状からみて、むしろ意識的になされた目印とみられるべき性質をもつ記載と認められるから、この記載は同号にいう他事記載として本件投票を無効ならしめるというべきである。<中略>

進んで「佐藤新作」なる投票の効力について検討する。本件検証の結果によると、右氏名の下部に記載された「」は、その筆勢、形状等からみて、「九」と判読しえないこともなく、「江」と判読しえないこともないが、しかし、どちらかといえばむしろ「九」に近いと認められるところ、原告の近隣に「大関信三九」(「オオゼキシンサク」と読む)という者がいて同人がかつて石橋町議会議員選挙に立候補したことのあることは当事者間に争がなく、また、「新作」の「作」は「サク」のほか「サ」と音読する場合があるから、「新作」を不用意に「新作九」と誤記する可能性がないとはいえず、なおまた、投票者の教育程度等如何によっては「シンサク」を漢字で書く場合に「新作九」と書く必要があると考える者がないともいえないことは経験則上明らかであり、これらの点を総合して考えると、前記の「佐藤新作」なる記載は「佐藤新作九」と判読するのが相当であり、そう判読するとき、右の「」すなわち「九」の記載は前述の除外例にいう他意なく生じた誤字、むだ字に当るものとして同号にいう他事記載に当らないと解すべきものである。

(外山 海老塚 小田原)

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