東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)5号 判決
以上の争いのない事実によれば、本件審決は違法であるから取消を免れない。よつて原告の本訴請求は正当であるから認容する。
〔編註〕 本件における事実関係は左のとおりである。
一 原告は主文同旨の判決を求め、請求原因として次のとおり述べた。
(一) 特許庁における手続の経緯
原告は、昭和四二年二月一三日特許庁に対し、名称を「深い不純物準位を含む瞬時高耐圧半導体装置」とする発明につき特許出願をしたが、昭和四五年五月六日拒絶査定を受けた。そこで原告は同年六月二五日審判の請求をし、同年審判第五五五四号事件として審理されたが、昭和四九年一一月二五日「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は、同年一二月一九日原告に送達された。
(二) 本願発明の要旨
深いエネルギー準位を形成する不純物を少くとも一種添加することにより逆方向における衝撃的電圧による破壊現象を抑止する効果をもたせたpn接合あるいはpin接合を少くとも一か所含むことを特徴とする半導体装置
(三) 審決理由の要点
本願発明の要旨は前項のとおりである。
これに対して、特公昭三八―一七二一〇号公報および特公昭三八―一七二一一号公報のいずれにも、デープレベル不純物、すなわち、深いエネルギー準位を形成する不純物を半導体基板に拡散した後、該1型基板の両面にp型およびn型不純物を合金することにより製造されたpin型の小容量接合ダイオードが記載されている。
そこで、本願の発明の装置と前記各引用例に記載された小容量接合ダイオードとを対比して検討すると、両者は深いエネルギー準位を形成する不純物を添加したpin接合を有する半導体装置である点において共通している。そして、深いエネルギー準位を形成する不純物の添加により逆方向に於ける衝撃的電圧による破壊現象を防止する点については各引用例には記載されていないが、このような効果は深いエネルギー準位を形成する不純物の添加という構成要件によつてのみ達成されるのであつて、前記各引用例の半導体装置でもかかる構成要件を有する以上、同一の効果を奏するものと認められる。また、各引用例に記載された接合ダイオードは、その特性がスイツチング動作に適していることからみて、その使用分野も共通しており、使用形態において本願発明の半導体装置と同様な状態に遭遇することは明らかである。
したがつて、本願発明と各引用例に記載の接合ダイオードとは、その構成が同一であり、本願発明は特許法第二九条第一項第三号に該当し特許を受けることができない。
(四) 審決を取消すべき事由
本願発明の構成要件は、深い不純物の有効添加領域が半導体および不純物の材質によつて、pかnかに限定される。一方、各引用例の深い不純物の有効添加領域は半導体および不純物の材質如何にかかわらず、p、nの界面を境として、p、nの双方である。したがつて本願発明と各引用例とは同一とはいえない。よつて、本願発明と各引用例との構成が同一であるとした審決には判断の誤りがあるから違法であり取消されなければならない。
二 被告は、「原告の請求を棄却する。」との判決を求め、原告主張の請求原因事実を認めると述べた。