東京高等裁判所 昭和50年(行ケ)57号 判決
一 請求の原因事実中、本願発明につき、出願から審決の成立に至るまでの特許庁における手続、発明の要旨及び審決の理由に関する事実は、当事者間に争いがない。
二 そこで、右審決の取消事由の有無について判断する。
(一) 成立に争いのない甲第四号証によれば、引用例においては、鋸刃(2)の軸部分には鋸刃(2)寄りと押捻子(3)寄りに各一対計四個の突出部が設けられていること、その四個の突出部のうち押捻子(3)寄りの二個の突出部のみが柄(1)の肩部に支持されているものが図示されていること、及び柄(1)と鋸刃(2)との連結が銃剣接手と表現されていることが認められる。右の構造及び銃剣接手の用語によれば、引用例のものは、押捻子(3)寄りの二個の突出部を柄(1)の肩部に支持させるために、その肩部に二つの溝を設け、突出部が該溝を通過した後軸部分を溝のない場所まで回動するものであることを推認することができる。さらに、右甲第四号証によれば、鋸刃(2)の軸部分に対する通孔について、引用例のものが、肩部において他の部分より小径となつていることが認められる。結局引用例のものも「通孔の軸線に対して正反対方向に位置していて鋸刃の軸を差し込むための二つの溝をもち長手方向通孔をその工具側の端部において狭くする環状肩部を有する」ものであり、本願発明とこの点においては実質的に同一である。
(二) 前掲甲第四号証によれば、引用例において、鋸刃(2)が押捻子(3)寄りの二個の突出部により柄(1)の肩部で支持され、軸端を押捻子(3)により押圧して、鋸刃(2)と柄(1)とを連結固着しており、鋸刃(2)寄りの突出部は遊んでいる態様が図示されていることが認められ、右によれば鋸刃(2)の支持は明らかに三点支持であり、また、鋸刃(2)の固定・分離の点においても引用例のものが本願発明に比しそれ程複雑困難であるとも考えられず、本願発明が右引用例に比し三点支持の点において格別の作用効果を有するとはいえない。
(三) さらに、原告主張の、二個の突出部下面と肩部との間の接触面積の大小の点は、設計上適宜選定される事項であると解され、本願発明の格別な効果とはいえない。
(四) 以上によれば、本願発明をもつて引用例から容易に推考することができるとした審決の判断は正当であつて、審決に原告主張のような違法はない。
三 よつて、本件審決の違法を理由にその取消を求める原告の本訴請求を失当として棄却する。